氷の騎士様が凍っておらず甘すぎる理由~騎士の妻が嫌だと駆け落ちしたのに今さら返せと言われても困ります!

ユウ

文字の大きさ
上 下
8 / 17
第一章

閑話2氷の騎士の恋

しおりを挟む
 ――結婚から約一年後。


 理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。

 悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。

「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」

 今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、

「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」

 急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。

 実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。

 初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。

「……これって、やっぱり……」

 悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。

「……とりあえず、調べてみないとね」

 悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。

 トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、

「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」

 そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。

「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」

 本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。

「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」

 何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。

 その夜、

「……やっぱり」

 悠真を寝かせて落ち着いた真彩は昼間買ってきた検査薬を使ってみると、思っていた通りの結果になったのだ。

「……でも理仁さんには、きちんと病院で確かめて貰ってから伝えよう」

 実は今、理仁は仕事で毎日帰りが遅く、朝も早い。

 何でも傘下組織で問題が発生したり経営の方でも様々な問題を抱えているらしく、常に忙しそうにしていてゆっくり話す時間が取れていない状況の中、万が一間違いだったりして迷惑を掛けたくないという思いから今はまだ話せないと考える真彩。

「とりあえず早めに病院に行って、検査してもらおう……」

 そう決めた真彩は今日も遅い理仁の帰りを待ちながらソファーで眠ってしまうのだった。

 翌日、真彩が目を覚ますといつの間にかベッドで眠っていたのだけれど、理仁の姿は無い。

「やだ、理仁さんが帰って来たの気づかなかった」

 帰宅に気づけなかったどころか、ソファーで眠ってしまった自分をベッドまで運ばせてしまった事にも申し訳なく思う真彩。

 急いでリビングへと向かうもやはり理仁の姿は無く、代わりに翔太郎が真彩を待っていた。

「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」

 忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。

 それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、

「姉さん!」

 いつになく慌てた表情の朔太郎が、

「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」

 一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され聖女の身代わりに敵国に献上される予定でしたが、魔性の騎士に寵愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
隣国との戦争が終わり敗戦国となったタンタニア王国はアルテリア帝国の従国となった。 その証として人質として王女、もしくは聖女を差し出さなくてはならなかった。 王女は体が弱くしかもまだ幼い為聖女を差し出すことになったのだが… 「嫌よ!敵国なんて行きたくない」 「サンディは我が国の聖女だ…そうだ!君が代わりに行けばいい」 泣きじゃくる親友と婚約者は私を見て言った。 「サンディ。君はこの国に必要な人だ!君が身代わりに行ってくれ」 遠回しにお前は必要ない。 そう言われているような気がした私は二人に何も言えなかった。 何故なら私は最弱の魔導士だからだ。 しかも二人は私を始末する計画で道中、襲われ殺されそうになるのだがこれこそが策略だった。 戦う術がない私は絶対絶命のピンチ! そう思ったはずが突如として第三の魔法に目覚めてしまうのだったが…

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

【第一章完結】半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

高潔な騎士と平民聖女の両片想い ~同僚の『氷の騎士』と天真爛漫少女の恋路を見守る魔法騎士の苦悩~

柴野
恋愛
 平民の少女が王宮へとやって来た。  彼女の名前はヘザー。百年に一度現れる『聖女』の力を持った彼女は、正しい教育を施すと共に厳しい管理体制の下で暮らさせなければならない。  彼女の護衛として選ばれたのは二人の近衛騎士。魔法騎士のデュアンと、聖騎士リチャードである。  最初はヘザーの護衛をするだけだったはずの二人だが、ヘザーの無垢な笑顔にやられ、徐々に親しくなっていく。さらにはリチャードがヘザーに好意を持ち始めた。  ヘザーもまんざらでもなさそうだとデュアンはすぐにわかったが、リチャードはなかなか想いを打ち明けようとしない。その理由は騎士としての誇り、そしてヘザーが縛られる聖女という立場で……? ※小説家になろうに重複投稿しています。

処理中です...