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14.素敵な殿方
しおりを挟むまるで嵐が去った後だった。
「お礼もできませんでしたわね」
「ええ…」
取り付く島もないなかったクリスティーヌとリリスはどうしたものかと思ったが、後で考えることにした。
「今は王都に帰る事を考えましょう。これで陛下をお救いできますわ」
「そうね」
彼等に時間はあまりないのだ。
一刻も早く薬草を届け、国王を救わなくてはならないのだが…。
「はぁー、なんて奥ゆかしいのかしら」
「何をなさってますの姫様」
「アルト様…」
ポーっとなるリーゼロッテに頭を抱えるリリス。
「まずいじゃないかしら?一国の姫がどこの誰かも解らない男に」
「これまで軟禁に近しい生活をして、近づく男は私欲しかない輩ばかりでしたしね」
第二王女でもあるリーゼロッテは正当な王位継承権を持っているが、政権を欲する大臣や側妃から常に命を狙われ続ける為、気が休まる時が無い。
あまつさえ、近づく男も信用できる者は限られた者だけだった。
そんなリーゼロッテに手を差し伸べ紳士的に接してくれたアルトに好感度を抱かないはずがない。
「まぁ、仕方ないわよね?王宮の男は屑ばかりだもの」
「お言葉をお慎みくださいな」
「だって、成人しない王女を手籠めにして子供を産ませようとするエロ爺がほとんどよ?これじゃあ、男に憧れるなんて無理よね」
「うっ!」
貴族代表として何も言えなくなる。
リリスは聖職者として王宮がどれだけ汚いのか理解していた。
「そんな時に、優しくて素敵な殿方がいればときめいちゃうわね?しかも、お礼はいらないとか、スマートだし」
「ええ…まず、宮廷貴族ならありえませんわ」
王家に恩を売れるのだから、両手を上げるだろう。
上手く行けば王女に取り入ることもできるのだから、政治的に利用もできるはずだ。
「まぁ、彼が宮廷貴族ではないのが幸いよね?見た所辺境貴族って感じだし」
「身なりもかなり質素でしたわね…でも、立派な方でしたわ」
クリスティーナは高位貴族代表でもあるので、身なりが乏しかろうとあ育ちまでは偽れなかった。
貴族としてしっかりした教育を受け、騎士道を貫いていることが良く解った。
「クリスティーナ…」
隣でリリスは呆れていた。
リーゼロッテのことを咎める立場にありながらクリスティーナもまんざらじゃなかった。
「一体なんの話をしてるの?」
「あー…いいわよ。アンタはすっこんでなさい。どうせお子ちゃまには一生理解できないだろうから」
「は?何だよそれ」
一人蚊帳の外にされるリーダは訳が解らないという顔をしながらも、一行は森を抜けることが叶うのだった。
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誤字が多い気がするんですけど…一度全部見直して修正した方が良いかも…。(上から目線ですいません)
アルトはドワーフに助けらてよかった。🤗
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続きが気になります。