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13.薬草
しおりを挟む「ちょっと!どういうことですの!」
クリスティーナはユリファレッドの胸ぐらを掴み、ガクガクと揺らす。
「そっ、そんなこと言われたって」
「とりあえず、その薬草を鑑定しましょう」
今騒いでも仕方ないとクールに言い放つ僧侶だったが…
「間違いないわ。これは、探していたエルフの薬草。しかも上級よ」
「なっ…なんてことですの!」
ずっと危険な森を彷徨い探し続けていた薬草が見つかった。
この薬草があればすぐにでも王都に戻りることもできると思った。
「あの…薬草が欲しかったんですか?」
「ええ…ある病を治す為に必要な薬草があったのだけど。この森でないと採取できなくてね」
動揺するクリスティーナを押しのけて、冷静に話す。
ただし、自分達の身分は簡単に明かせないのでかいつまんで説明した。
「どうだったんですね。でも、これじゃ当たりませんよね?もっと採って来ましょうか?」
「「「は?」」」
「僕の使い魔に頼めば、この薬草と同じ種類を見つけてくれますよ」
ありえないだろ!
一同は思ったが、グリフォンを使役する人間がいる時点でありえない。
「コジロー、薬草を探して欲しんだけどできる?」
「クー!」
「大丈夫みたいです」
居場所をすぐ特定すると、ここからそんなに離れていない場所で採取できる事が解った。
その結果。
「どうぞ!」
一時間足らずで大量の薬草を採取して来たアルトに彼等は絶句した。
「何ですの…ありえませんわ」
「普通、猛獣の巣に守られてる薬草を普通に採取とか無理でしょ」
「俺、冒険家として自信なくした」
彼等は国内でも名だたる冒険家でもある。
冒険ギルドからだけでなく王家からの信頼もあるのだが、自信喪失してしまいそうになる。
「じゃあ僕はこれで」
「え!」
この状態で帰るのか!とクリスティーナは思った。
「森はこのまま、真っすぐ進めば抜けれますので。道中お気をつけてください。少ないですけ…」
そう言いながら果物を差し出す。
薬草を採取する最中に見つけたと思われる果物だった。
「君はなんていい人なんだ!」
「違うでしょ!このお馬鹿!」
「どこまでお馬鹿なんですの!」
素直に受け取るユリファレッドを女性二人は怒鳴った。
「名前を名乗ってなかったわね…私はリリス。聖職者よ」
「つきましてはお礼をさせていただきたく思います」
クリスティーナは恩を受け、お礼もせずに帰すなんてできないと言うが、アルトからすればたいしたことではない。
「お礼なんていいですよ。では…」
バサバサ!!
グリフォンが翼を開く。
「アルト様!お待ちになってください!」
「リーゼロッテさん、皆さん!道中お気をつけくださいね!」
そう言い残して風のように去ってしまった。
残された一同はポカーンと口を開けながら茫然と立ち尽くすしかなかった。
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