捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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12.帰還

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無事に着地してすぐ、リーゼロッテは仲間の元に向かった。


「皆さ…あれ?どうしました?」


一同は固まっていた。
その中には気絶しながら立っている器用な者もいる。


「リーゼロッテ様、これは」

「親切な方が助けてくださったんです。ご心配なく、グリフォンはこの方の従魔なので」

「グリフォンを従魔…」

ダラダラと冷や汗をかく。
長い歴史の中で聖獣や神獣を使役した魔獣使いや召喚士はいることにはいるが、片手で数える程だ。


宮廷魔導士でもいない程希少価値が高い。


「リーゼロッテさん、その方達ですか?」

「はいアルト様。ありがとうございます」

「随分、顔色が悪いですが大丈夫でしょうか」


見た所、普通の少年に見えた。
パーティーリーダーであるユリファレッドはとてもじゃないが猛獣を使役するような術者に見えない。


「申し遅れました。僕はアルトと申します」

「ご挨拶が遅れましたことをお詫び申し上げますわ。私はクリスティーナと申します。この度は従妹を助けて下さりありがとうございます」


「どうか頭をお上げください。僕も通りかかっただけです。それよりも皆さん、怪我が酷いので、薬草をどうぞ」

「いいのか…いっ!」

ユリファレッドの足をおもいっきり踏みつけるクリスティーナ。傍にいる僧侶も睨む。

「仲間を助けていただいたのに、申し訳けありません」

「いいえ、困った時はお互い様ですし。僕の薬草で足りたらいいのですが…」

アルトは目の前にいる全員が重傷を負っているのに気づく。
手持ちの薬草で全回復は難しいと思い、鞄の中を探すも薬草の予備はない。


「すいません…」

「いいのです。ご親切にありがとうございます」


最初こそは警戒していたクリスティーナだったが、敵に背中を見せ警戒心がまったくないアルトに敵意は感じられなかった。

「アルト様は召喚士様でしょうか?」

「はい、未熟者ですが」

「未熟…ですか」

クリスティーナはグリフォンを使役できる時点で未熟なはずはない。
もしかしたら自分に厳しい人なのではないかと思った。


「ティナ!アルト様と見つめあわないでください!ずるいですよ」

「見つめておりませんわ!それよりも、護衛から離れて何処にいらしたんですか?」

「えっ…えと。薬草を見つけて…その」

「何度も申し上げたはずですが?勝手な行動はなさらないようにと」

「すいません」


ギロリと睨むクリスティーナに小さくなるリーゼロッテ。


「はぁー、とりあえず火あぶりの刑は免れたわね。でも、これからどうやってあれを入手するか」

「ああああ!」

「何なの?うるさいわよ馬鹿」

後で悲鳴を上げているユリファレッドを睨む。

「違う、この薬草…俺達が探していた薬草なんだけど」

「は?」


一同にさらなる衝撃が走った。


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