捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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7.お留守番

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しばらくドワーフの里に置いてもらえることになったアルトは炊事係を請け負った。


「これ、お弁当です」

「弁当?なんじゃ?」


「えーっと携帯食です。お仕事先で召し上がってくださいね。こっちは飲み物です」


手作りで作った竹の水筒を渡される。

「そうか、すまんのぉ?大人しくいい子で待っておれ」

「お土産を期待しておるんじゃぞ」


ポンポンと頭を撫でられまるで孫に接するようだった。



「行っちゃった」

「クゥーン」


一人と一匹は留守番をしていた。


「これからどうしよう。杖が無いと僕は何もできないし」

召喚魔法が使えなければ魔法を使う事ができない。


「せめて仕事に向かうドワーフさん達の為にご飯を作ろう」

「アン!」

「そうだよ、もしかしたら…」


ドワーフが行っていたみたいに逃げだしてくる可能性だってある。
そうなれば会う可能性は低いかも知れないが可能性はゼロではないので望みを捨ることもない。

「そうとなれば水を汲みに行こう」

「アン!」

「君がいてくれて良かった」


小屋を出て水を汲みに向かう中、側にてくれたハチを見て心から感謝する。


「一人だと心細いし…でも、運が良かったな」


ドワーフに拾ってもらえなかったらと思うとゾッとする。


「これって捨てられたってことだよな。領地の皆になんて言おうか…いっそのこと廃嫡にしてもらうか?」

婚約者に捨てられた領主なんて恥もいいところだ。
何のために冒険家になったのか。


貧しい領地を少しでも潤す為でもあるが、一番は聖女として能力を持つマリエンが外の世界に出たいと言ったのが一番の理由だった。


「でも…これで良かったかもしれない」

アルトは母親を悪く言う女性とは夫婦に慣れないし、あんな乱暴な女性を妻に迎えたら何時の日か絶対に領地を壊し、領民にも手を出すかもしれない。


そんなことは許せない。


「領地にはお祖父様もグレタもいる」

妹は幼いがとっても優秀だから、このまま補佐役に回るのも悪くないと思ったアルトはそのまま川の方に向かった。



その時だった。


ズゥゥン!!


「わぁ!何だ?地震?」


地面が大きく揺れた。

ドワーフの里を出た方だった。


「アンアン!」


「何処行くの!」

ハチは霧の方に走って行く。


「待って…そっちはダメだよ!お爺さん達が出ちゃダメって言って…待ってハチ!」


アルトが止めるのも聞かずにハチは結界の外を出て行ってしまった。


放って置くわけにも行かずアルトも後を追いかけるのだった。



「何処に行くの」

足場が悪くなり、何処か解らなくなっている最中だった。



「きゃあああああ!!」


少女の悲鳴が響いた。


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