捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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4.ドワーフ族

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――起きて。


誰が呼んでいるような気がした。



――アルト。
もう大丈夫だから起きて。



冷たい風がここちよく、身を包むのは羽毛だった。
雛鳥を優しく包む様な優しい物がアルトを包み込んでいる。



山吹の花びらがヒラヒラ舞いながら、羽が羽ばたく音がする。


そう、この世界ではないどこか。
大自然に囲まれた秘境とも呼ばれた神様の住まう霊山。






そこで慎ましやか生活を送っていた。
とても辺鄙な土地で自給自足をしながら生活すると言う不便さを持ちながらも神様を敬い、毎日祈りながら暮らす心優しい少年だった。


物心ついた頃から、人とは異なるあやかしや人外的な存在を見ることが出来た故かもしれない。


特にキツネやカラス等は神様のお使いとして教えられて来たので、大切に接した。


その日も神社でカラス達に餌をあげようとしていたのだが、山に入って来た狩人からキツネを守って死んでしまった。






「うー…」


ピチャンと雫が落ちる音が聞こえる。



「起きろ小僧」


「え…」


パチッと目を覚ますと。


「わぁ!」


「おお、生きているぞ!」

「動いたぞ!」


「本当だ!良かったな!」


透明の棺にて眠っていたアルトは体の傷が無いことに気づく。

「眠り姫が目覚めたぞ!」

「キスはしなくていいのか?」

「念のためにしたらどうだ?」


七人の老人があれやこれやと話している。


「え?白雪姫と七人の小人?」

目の前で広げられる光景に幼い頃から知っている童話の物語の登場人物を思い出すが、何故自分が白雪姫になぅているのだろうか?


「あっ…あの、皆さんが助けてくださったんでしょうか?」

「そうだぞ」

「ありがとうございます。皆さんは僕の命の恩人です」


事情は良く解らないが、あのまま放置されていたら魔獣に食い殺されるか、そのまま死んでいた可能性が高い。


アルトは律儀にお礼を言った。


「良い、仲間を助けてくれた礼をしたまでじゃ…しかし人の子にしては不思議な魂をしていおるな」

「え?」

「ワシを見ても驚かんのじゃな」

小さな老人はそろってアルトをじっと見つめる。
彼等は人間よりもかなり小さいので、普通は驚くし、不気味がられることがある。


「えっと…随分可愛らしいお爺ちゃまですね」

「いや、違うじゃろ」

「僕の故郷には小さなお爺さんはいないですが、驚く程のことじゃありませんから」


アルトは幼少期から貧乏辺境伯爵家で苦労して来たので、ある程度のことでは動じなかった。


だから今更少し変わった老人ぐらいで偏見の目を持つことはなかった。




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