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3.捨てられた召喚士
しおりを挟む傷だらけの体を引きずりながら、荷物持ちをさせらるアルトは仲間と一緒にダンジョンに入った。
ドンドン奥深く入っている所為で足元も不安定で、霧が濃くなっている。
「クゥーン」
「ハチ、大丈夫だよ」
怯えるハチを抱きしめながら先に進む。
「おい、もっと先だ」
「え…、これ以上は」
「いんんだよ!」
「わぁぁ!」
ローガスがニヤリと笑いながら洞窟の中に突き飛ばした。
「うっ…なんの真似だ!」
「お前は真の仲間じゃねぇ。最後ぐらい役に立て」
いきなり言われた言葉に唖然とする。
「今までは、メンバーを増やすには金がかかるからお前を入れていたが、俺達はこれから勇者パーティーになる。そうなるとお前みたいな屑は邪魔だ」
「そんな…」
「今までの迷惑料としてこの杖と、お前の魔獣は貰っておくぜ。魔獣は奴隷商人に売れば役に立つからな」
「ふざけるな!」
魔獣は売り物じゃない。
召喚士や魔獣使い達からすれば我が子のような存在だった。
「彼等は道具じゃない!友達なんだ!」
「友達だぁ?ぎゃははは!馬鹿だろ?」
「アルト、貴方のそういう所大嫌いなの…そんなんだから魔獣を服従させられないのよ!せめて私に悪いと思うならここでダンジョンの餌食になりなさい」
「えっ…」
よく見ると普通の洞窟じゃなかった。
傍には大きな巣があり、魔獣の洞窟だと解る。
「ここは魔の洞窟だ。このダンジョンをクリアする為にお前は犠牲になれ…俺達が英雄になる手助けができるんだからな!光栄に思えよ」
「待て…」
「このまま朽ち果てなさいな!」
「うわぁぁぁ!」
後方から僧侶により雷撃を落とされる。
「雷と共に魔獣は貴方を襲って来ますけど…ご実家では戦死したとお伝えそいてさしあげますわ」
「心配しなくてもアルトの遺産は全部私が貰ってあげるわ。領地はそのままローガス様の物となり私はローガス様の妻になるのよ!」
――これが狙いだったのか。
マリエンの言葉に失望感を抱く。
変わってしまったのは自分が弱いからだと思ったが、根本的に間違えたんだと思った。
ここまで性格が歪んでしまったマリエンを止められなかった。
「そのまま死ねよ」
「ごきげんよう」
「じゃあね?」
去って行く元仲間。
彼等からしたら最初から仲間ではなかったかもしれないと思いながら意識が遠のいて行った。
「アンアン!」
「ごめんハチ…皆、ごめん」
自分が至らない所為で、大切な友達を失うことになってしまった。
そして故郷に残して来た領民や幼い妹に弟や祖父母に申し訳なさがこみ上げて来た。
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