捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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2.役立たずの末路

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「この屑が!!」


採取した薬草と食料を使いきってしまったアルトに待っていたのは暴力と罵倒だった。


「食料を食っただぁ!だったら帰ってくるんじゃねぇよ!」

「洗濯物もしないで…あげく食料盗み食いするなんて最低よ!この盗人!乞食!どうするのよ今晩の夕食は!」

あんまりな言い草だった。
アルトが必死で食料の調達をしている間、彼等は休んで酒を飲んだりしていただけなのに、ずっと働いていたアルトに対してあんまりだった。


「すいませ…」

「それが謝罪のつもりなの?地面に頭をつけて土下座をなさい」

「えっ…」

高圧的な態度を取るマリエンは汚い物を見る様な目で告げた。


「出来損ないの癖に立場を解ってないわね…今までお情けで幼馴染をしてあげたのに感謝もないなんてなんて恩知らずなのに」

「そんな言い方‥」

「私に指図するんじゃないわよ!生意気よ!」


「あっ!」

ブーツで手を踏みつけられる。


「醜くて力もない、名前だけの貴族の癖に…アンタの母親とそっくりだわ」

「っ!!」

アルトは辺境地に住む貴族で母親は北を守る貴族の娘だった。
白磁のような白い肌に紫の瞳が特徴的だったが、中世的な容姿を良く思わない者もいた。


「アヒルから生まれた醜いアヒルの子…本当に溝ぼらしい。さぁ、這いつくばりなさいな」

「食料に手を出したことは謝りましょう。ですが、貴女に母を悪く言われるいわれはありません。人の母親を侮辱するとは何様です」

「は?」


これまで大人しくして来た。
幼少期は少し我が儘だが思いやりのある少女だったのに、成長するにつれて我儘が酷くなったマリエンだったが、妹のように思い守って来た。


マリエンの姉からも頼まれていたのだから。
辺境貴族同士で、共に共存して生きて行くために結ばれた縁であるが、大事にしようと。


早くに母親を亡くしたマリエンを不憫に思ったアルトの母はマリエンを実の娘のように可愛がっていたのに。


「例え私が出来損ないであっても…母の侮辱は許されません。他人を非難する資格は貴女にない!」


「奴隷が調子に乗ってんじゃねえんだよ!」

「うっ!」


アルトの初めての抵抗に苛立つローガスは容赦なく殴り、後ろにいる僧侶は錫杖で痛めつける。


「パーティーのお荷物の分際で聖女に意見するなんてどういう了見ですの?」

「うっ!」

錫杖で殴られ地面に押さえつけられてしまうアルトは動けなかった。


「本当に情けない男…」


唯一、加担しなかった女戦士のリッドが告げた。

「婚約者を他の男に取られて母親まで馬鹿にされるなんて本当に情けないわね」

「リッド…そうかもね」

「フンッ!」


ローガスやマリエンに僧侶のように暴力は振るうことはないが、庇う事はない。
あくまで静観しているリッドはただ無表情でアルトを見つめていた。



そしてその日はズタボロの状態で真面な手当てもされることなく放置されたまま、テントの外で魔獣と一緒に野宿する羽目になるのだった。



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