捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

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1.小さなお爺さん

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この季節では真面な食料を調達するのは困難だった。

「魚、これだけしかなかった」

出来れば肉が欲しいが川では小魚しか取れず、キノコも萎びたモノばかりだった。


幸いなのは果物が取れたくらいだろう。


早く帰らなくてはと足を速めるが、進行方向に1人の老人が苦しそうに唸っていた。


「大変だ!お爺さん!どうしたんですか」

「足が…足が動かんのじゃ」


随分と小柄な老人だった。


「待ってください。すぐに毒消し…」

鞄から毒消しを取り出そうとしたが、迷いが生じた。
森の中で薬草は貴重だった。

苦労して探した薬草を持ち帰らなければ、また酷い目に合うかもしれない。


――でも…!


「うぅ!!」

「お爺さん、これを」


アルトはあるだけの薬草を差し出した。

「小僧…良いのか」

「いいんです。さぁ、ゆっくり飲んでください。それから横になった方がいいですよ」

着ている服を脱ぎ、枕代わりにして老人を寝かせる。


「ハチ、お爺さんが寒くないように近くに」

「アン!」


白狼は傍に寄り、暖を取る。


「すまん、小僧…恩に着る」

老人はポロリ涙を流しながらアルトに解放される。


「僕は大丈夫ですから…さぁこれも食べてください」

空腹のまま薬草を飲んでは体に悪いので果物を差し出す。


「すまん…すまん!」

情けなく涙を流しながらも、果物を食べ老人はアルトの優しさ身に染みる。


「お爺さんは冒険家ですか?」

「いや、この近くの村住んでい鍛冶師じゃ…道に迷って魔獣に襲われてしまったんじゃ。帰りたいが霧が深くて道が解らんのじゃ」

「だったらお任せください」


アルトは笑みを浮かべ、杖を取り出す。


「我が声に耳を傾けろ、我が忠実なる使い魔よ!サモン!」

魔法陣を描いた中から現れたのは使い魔だった。


「これは魔獣か?」

「はい、燕の一種です。名前をコジローと言います」

「ピュー!」


小さな燕はアルトの肩に止まる。


「コジロー、お爺さんを村まで案内するんだよ。道中、魔獣に遭遇しないようにするんだ。だきるね?」

「ピュー!」

「いい子だ」


世には戦闘以外にも役に立つ魔獣が存在する。
アルトが使役するん魔獣は低級魔獣だが、薬草を探したり、道案内をしてくれたりと重宝している。


「本当にいいのか?」

「はい、でも…足の傷が」

「この程度大丈夫だ」

松葉杖を持ちながらひょこひょこと去って行く老人に手を振りながらアルトは仲間の元に戻て行くのだった。


「ワン!」

「可愛いお爺ちゃんだったね」

「クゥーン」


小さなお爺さんとの出会いに少しだけ心がほっこりしながら来た道を戻って行った。
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