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プロローグ
しおりを挟むこの世に人類が生れるずっと昔の話。
地上には異なる神々が共存して生きて来たと言われている。
海を守護す神は海底に神殿を作り、そこが王国となり。
空を守護する神は天空に神殿を作った。
それぞれ不可侵入同盟を作りながらも彼等は協力して一つの世界を作り上げた。
そして、やがて、四つの神が誕生した。
水・炎・風・土。
現在で言う所の四大要素となる神が後の四大精霊と呼ばれるようになる。
しかし、彼等は実態を持つことはできない。
そんな彼等と唯一心を通わすことが出来る存在がいた。
神の愛し子と呼ばれ、純粋で清らかな心を持ち生まれた。
通常、精霊とは異なり人の子として生まれれば欲が深く、綺麗な心は消えてしまう。
けれど、精霊に愛された愛しい子は精霊を敬い、動物を心から愛する優しさを忘れることはない。
その一方でその優しさは時として己を蝕むようになっていた。
優しさに漬け込む人間にとって――。
「またお前かよこの出来損ない!」
「すっ…すいませ…」
「出来損ないが口を出すんじゃないわよ!」
罵倒が飛び通う中、一人の少年は鞭で打たれながらも抵抗はしなかった。
「本当に役立たずだな!お情けでパーティーにおいてやっているのに、荷物持ちと魔獣の世話しかできないなんてな!」
「本当に生きている価値がないわね…アンタみたいな人間、生まれてこなければ良かったのに」
「冴えある明けの砂漠のお荷物よ」
ズタボロな服装で真面な装備もな少年ことアルトは痛めつけられていた。
「本当に出来損ないね」
「マリエン…」
アルトを見下すような視線を向けるのは幼馴染であり婚約者のマリエン・ランフォード。
ただし二人の間に恋慕の情は存在しなかった。
元は親同士が決めた婚約者であったが、幼少期は二人共仲良く田舎で協力し合っていた。
しかし、冒険家として故郷をでてからマリエンは変わり、優れた冒険家でリーダーである彼、ローガスと婚姻な関係になったのだった。
そして次第にマリエンはアルトを嫌う様になったのだった。
「マリン、こんな馬鹿は放っておけよ」
「ええ、ローガス」
見せつけるように二人は人目を気にせずいちゃつく。
「おい愚図、食料を調達してテントを貼れ!それぎたいしか価値が無いんだからよ!」
「ついでに洗濯をしておいて…その変の川じゃ汚いんだから川まで行きなさい…アンタの食事は無しよ?だって働いていないんだから」
「ぎゃははは!いいんじゃねぇか!」
大量の洗濯物を投げ捨てられ、突き飛ばされたアルトは体に鞭を打ちながらその場を出て行く。
「クゥーン」
「大丈夫だよ…大したことないよ」
アルトの後ろを追いかけるのは、白狼だった。
ただし、通常のサイズよりも小さく薬草を探す事は出来ても戦闘に不向きだった。
「そうだ、これだけは取り上げられなかったんだ。お食べ」
ポケットに隠し持っていたポーションと芋を差し出す。
「ごめんね、僕が貧しい所為でお腹いっぱい食べさせてあげられなくて」
「クゥーン」
白狼は必死で首を振る。
既にアルトは三日間食事を与えて貰えず水だけで生活していた。
あげく使役する魔獣達の食事だけでなく、メンバーの食糧調達やテント等もアルトの私物だった。
アルトは彼等に搾取され続けていたのだった。
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