捨てられた召喚士は人外に寵愛され過ぎている

ユウ

文字の大きさ
上 下
1 / 15

プロローグ

しおりを挟む






この世に人類が生れるずっと昔の話。
地上には異なる神々が共存して生きて来たと言われている。


海を守護す神は海底に神殿を作り、そこが王国となり。

空を守護する神は天空に神殿を作った。

それぞれ不可侵入同盟を作りながらも彼等は協力して一つの世界を作り上げた。


そして、やがて、四つの神が誕生した。


水・炎・風・土。

現在で言う所の四大要素となる神が後の四大精霊と呼ばれるようになる。

しかし、彼等は実態を持つことはできない。
そんな彼等と唯一心を通わすことが出来る存在がいた。

神の愛し子と呼ばれ、純粋で清らかな心を持ち生まれた。
通常、精霊とは異なり人の子として生まれれば欲が深く、綺麗な心は消えてしまう。


けれど、精霊に愛された愛しい子は精霊を敬い、動物を心から愛する優しさを忘れることはない。


その一方でその優しさは時として己を蝕むようになっていた。

優しさに漬け込む人間にとって――。





「またお前かよこの出来損ない!」

「すっ…すいませ…」

「出来損ないが口を出すんじゃないわよ!」


罵倒が飛び通う中、一人の少年は鞭で打たれながらも抵抗はしなかった。


「本当に役立たずだな!お情けでパーティーにおいてやっているのに、荷物持ちと魔獣の世話しかできないなんてな!」

「本当に生きている価値がないわね…アンタみたいな人間、生まれてこなければ良かったのに」

「冴えある明けの砂漠のお荷物よ」


ズタボロな服装で真面な装備もな少年ことアルトは痛めつけられていた。

「本当に出来損ないね」

「マリエン…」

アルトを見下すような視線を向けるのは幼馴染であり婚約者のマリエン・ランフォード。

ただし二人の間に恋慕の情は存在しなかった。
元は親同士が決めた婚約者であったが、幼少期は二人共仲良く田舎で協力し合っていた。


しかし、冒険家として故郷をでてからマリエンは変わり、優れた冒険家でリーダーである彼、ローガスと婚姻な関係になったのだった。


そして次第にマリエンはアルトを嫌う様になったのだった。


「マリン、こんな馬鹿は放っておけよ」

「ええ、ローガス」


見せつけるように二人は人目を気にせずいちゃつく。

「おい愚図、食料を調達してテントを貼れ!それぎたいしか価値が無いんだからよ!」

「ついでに洗濯をしておいて…その変の川じゃ汚いんだから川まで行きなさい…アンタの食事は無しよ?だって働いていないんだから」

「ぎゃははは!いいんじゃねぇか!」


大量の洗濯物を投げ捨てられ、突き飛ばされたアルトは体に鞭を打ちながらその場を出て行く。



「クゥーン」

「大丈夫だよ…大したことないよ」


アルトの後ろを追いかけるのは、白狼だった。
ただし、通常のサイズよりも小さく薬草を探す事は出来ても戦闘に不向きだった。


「そうだ、これだけは取り上げられなかったんだ。お食べ」

ポケットに隠し持っていたポーションと芋を差し出す。


「ごめんね、僕が貧しい所為でお腹いっぱい食べさせてあげられなくて」

「クゥーン」

白狼は必死で首を振る。
既にアルトは三日間食事を与えて貰えず水だけで生活していた。

あげく使役する魔獣達の食事だけでなく、メンバーの食糧調達やテント等もアルトの私物だった。


アルトは彼等に搾取され続けていたのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??

新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...