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第一章
2発動
しおりを挟む誰かを傷つけたいわけじゃない。
でも俺を頼ってくれた人を見捨てたくない。
『優しい男になれ』
お祖父ちゃんの言葉が頭に響く。
『優しい心を忘れるな。お前はそのままでいい』
どんなに辛くてもお祖父ちゃんは変わらなくていいと言ってくれた。
『千早、優しさを持て』
ドクン!
胸の奥が熱い。
何だろう。
お祖父ちゃんの言葉が胸に響き、俺の中にある何かが。
外に出ていく。
『お前の中にある優しさは力になる』
力?
胸が熱い。
どうにかなってしまいそうになる。
「盾!」
無意識に俺は言葉を放ったと同時に光の線が螺旋を描き、炎を遮断した。
「なっ…呪文も魔法の杖もなく結界を敷いた?」
「ありえない…魔導書も持っていないのに」
炎から守られた俺達。
気づくと傷だらけだった小人達の怪我が癒えていた。
『結界が敷かれました』
これが結界?
「くそ、こんな結界壊してやる。炎の精霊よ。この結界を破り魔物を森ごと燃やし尽くせ!」
「止めろ…彼らが何をしたっていうんだ」
「魔物は排除すべきだ、存在が罪なんだ」
存在だけが罪?
何もしていないのに?
何かしたわけじゃない。
存在だけが?
俺は家族に言われた言葉を思い出す。
迷惑をかけているわけじゃないのに、いるだけで目障りだと言われたことを思いだす。
「違う…」
「魔物は消えればいいんだ!この世から!」
聞く耳を持たない彼に俺は怒りを覚えた。
ただ見た目だけで判断するなんて。
そんなの…
「間違ってる!」
するとまた声が聞こえた。
『解放を、守るために』
その声が鍵だった。
俺は心に浮かんだ言葉を放った。
「天使のゆりかご!」
無数の羽が飛び散り、攻撃を仕掛けていた二人はその場に倒れる。
「えっ…」
『魔法発動、眠っています。止めを刺すのもよし、逃げるのもよしです』
「じゃあ、逃げるで」
止めを刺すってなんだよ。
普通逃げるを選択するだろ?
「とにかくここを離れよう」
目を覚ましたら絶対に攻撃してきそうだし。
「小人さん、危ないから逃げようか」
俺がしゃがみ尋ねると頷いてくれた。
「小人さん、気をつけて帰ってね…そうだ。また怪我したときの為にアロエクリームどうぞ」
俺が作ったアロエだ。
差し出すと頭を下げて去っていく。
「もう怪我をしませんように」
後姿が消えるのを確認した後に、光が見える。
「あれは…」
入口かと思い近づくと光に吸い込まれてしまった。
「何だ!」
俺は光に吸い込まれ、意識を手放した。
そして次に目覚めたときは自分の部屋だった。
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