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序章
3遺産
しおりを挟む葬儀から一週間が過ぎた後。
「俺に相続?」
「はい。お祖父様は生前、別邸を千早さんに相続させたいとおっしゃられました」
「ちょっと待って!何でこんな奴に!」
相続権利は孫にある。
だけど両親は一円だって俺に相続の権利を与えたくないのだろう。
「千早様が相続を放棄される場合ですが、建物の処分費用はこの金額になります」
「なっ…」
金額は恐ろしい金額だった。
「それから現在住まわれている家は千景様の名義でしたね?遺産を引き継ぐ際の贈与税はこの通りです」
「なっ…高すぎだろ!」
「遺産を相続するならこの程度は当然かと」
「お金は…通帳は!」
贈与税の高さに真っ青になる二人。
それなりに稼いでいるようだが、おじいちゃんの遺産を手にしていたのか。
「何で通帳にお金がないのよ」
「生前、千景様は福祉施設に寄付をしておりました。10億程」
「はぁ!」
「ご自分がなくなった時、万一千早様が相続権を放棄したときは皆様の家は売却と残った資産は福祉施設に寄付するそうです」
これはもう死刑宣告のようなものだ。
おじいちゃんは相当な資産家であるが贅沢を好んでいるわけではない。
お金は人様の為に使うものだと言っていた。
両親が贅沢な食事をする傍ら質素倹約を心掛けていた。
「待って、じゃあお義父さんの車は?」
「あの車はサブスクだと聞いています」
「何ですって!じゃあお金はほとんどないじゃない!」
俺に相続された家具などはかなり古い。
現在の日本ではまず使わないおかまにミシンだって時代劇で使うようなもの。
オルガンだってかなり年季がある。
埃まみれで見るに堪えなかった母さんはすべて売ると言うが。
「これらの家具を処分するなら業者に…安くてもこれだけの金額は」
「もういいわよ!」
弁護士さんの言葉に怒鳴り散らす。
「こんな負の遺産要らないわよ!その代りアンタは勘当よ!二度と私達の目の前に現れないで」
「何の役にも立たななかったな!お前なんてもう息子じゃない…この疫病神だ」
「無一文になったわね?寒空の下で死んでよね」
「お似合いだぜ」
「お前なんて消えればいいのに」
そう言い残して家族は早々に去っていく。
その所為で俺は名字だけは相馬であるが、縁を切られてしまったのだった。
「千早君、お話があります」
「えっ…碓井さん?」
俺は碓井さんに手を引かれ家の中に入るとおじいちゃんの部屋にあるものを見せられた。
それは碓井さんに渡されたのはこの家に関する書類だった。
「これ…俺の名前」
「三年前だよ。千景さんがこっそり手続きをしたのは」
そんな前から?
俺は全然気づかなかったのにおじいちゃんはこうなることを予測したのか?
戸惑う俺に碓井さんは肩をポンと叩き経緯を話してくれた。
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