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82怒れる牙
しおりを挟む私よりも怒りを露にするフェンリル達。
彼らの怒りで他の魔獣が集まって来たのだけど。
「アルベールさん…なんか空が」
「フェンリルの泣き声で他の魔物を呼んだのでしょう」
「そんなことできるの!」
フェンリルって何所まですごいんだ。
「鳴き声で町ひとつ崩壊させますから」
「そんなに?」
私の傍にいるフェンリルはそんな真似をしない。
基本は大人しいのだけど。
「言っておきますが、姫様の魔獣のほっとんどが人間側からすれば恐ろしい存在です」
「そう?」
モフモフで可愛いのに。
でも一応は魔獣なんだよね。
この世界では魔族でもあり、人間を襲うことがあるらしいけど。
「助けてぇぇ!」
「彼らにとっては弱き存在に力を使うまでもないようですね」
「みたいだね」
悲鳴を上げているだけの男に私は見ないふりをした。
「アンリ様!どうかお助けを!」
「私は貴方なんて知りません。警備の方を呼んでください」
「なんて酷い…私は貴女の治める領民ですぞ!領主の娘ならば領民を守るのは義務ですぞ」
正気かこの人。
その領民の娘に今までしたことを忘れたのか。
「私は領主の娘だったんですか」
「え?」
「父がどこぞの女に産ませた生まれの卑しい子だと言ったのは誰でしたか?加護もしょぼいし頭も悪い。できs来ないなんて死ねばよかったのに…でしたよね?」
「それは…」
「私の悪い噂を吹聴して、私を追い出すことになった原因を作って今更?どこまでも図々しい男」
私はここまで冷たい人間だったのかびっくりだわ。
今まで感情を押し殺してきたけど、領地を出てアレクに出会って私は我慢を辞めた。
「私を先に捨てた人間でしょう?父が亡くなった後もやりたい放題したのだから好きに‥まさかあの国からスパイを送り込んだのかしら?」
「え?」
「大変だわ。そうなると、宣戦布告ということになるわね?」
ちらりとアルベールさんに視線を送ると私の言わんとしていることを理解してくれた。
「この国にスパイを送るとは…敵国になる気だな。お前は不法侵入者並びに敵国の諜報員として捕縛だ!」
「何を言っているんです!そんなはず…」
問答無用で拘束されながらも暴れて違うと叫ぶけど。
普通に考えておかしいわ。
なんの伝手もない彼がどうして国に入ることができたか。
手引きした人がいるに違いない。
アレクに伝えないと!
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