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64新生活
しおりを挟む隣国では色々きな臭い噂を耳にしながらも今日も糧を得るために畑仕事に勤しむ私。
「アンリ、そろそろ休憩にしないか」
「うん、お昼に」
「おにぎりを作ったんだ。君と同じに行かないが」
「あれくのおにぎり美味しいから」
ここ最近はアレクがご飯を作ってくれている。
私達はギルドにお願いしてこじんまりとした家を購入した。
先月入籍することにした。
結婚式はせずに食事会をして田舎で言う披露宴的なものをした。
挙式にこだわりはないし、そもそも私は貴族を辞めた身だ。
国王陛下にはこの国に永住することを伝えた。
聖女になる云々で悩んでいたのだけど、王太子殿下…お兄様が言い出したのだ。
「もう二人とも夫婦になったら?」
「兄上!なんてことを!」
「そもそも聖女にしないでいい方法はお前がアンリちゃんと結婚して子供作れば解決だ」
「だから!」
「ええい!子供じゃあるまいし赤くなるな。みっともない」
なんだかんだでアレクは純情だ。
一緒に住んでいた頃も私に色気がないからなのか手をだすことはなかった。
でもそれはアレクが真面目だからだ。
「周りは皆お前達がいつ挙式をするか私に聞いている」
「なっ!」
「お前が女性を連れて来たんだ。普通はな?」
「な?じゃありません」
やっぱりまわりはそうなのか。
別に嫌じゃないからいいんだけどね。
「順序があります!」
「お前は本当に頭が固いな。今や我が国の食料大臣に等しいのはアンリちゃんだ。このまま放置したら他国から見合いは来るだろうし…拒否して攫われて既成事実になったらどうする?」
「既成事実…」
「ないとは言えないよ」
いや、従魔がいるから普通はないと言いたいけど。
この世に絶対なんて言葉はないと身を持って知った私からすればないとは言えないか。
「私を安心させてくれ」
「しかし兄上よりも先に…」
「そこは気にしなくていい。アンリちゃんを一番確実に守り聖女にしない方法は夫婦になることだ。子供に関しては授かりものだが…せめて籍を入れろ」
等と言う形でポンポン話が進み、籍を入れることになった。
挙式はせずにこじんまりとした披露宴を行って私はめだたくアレクの奥さんになった。
だが生活が変わらないだろうと思ったが、甘やかしが半端ない。
前から思ったけど。
「アレク。片づけは私がするよ」
「いや、俺がするから休んでてくれ」
少しでも重い荷物を持とうとするとアレクが率先して運ぶのだ。
これじゃあダメ人間になる気がする。
けれど他の人に相談すると。
「普通じゃないですか?」
「おかしくありませんよ」
等と言われてしまう。
その一方で奥様達は藁人形を取り出す。
「これまでどんな酷い扱いを受けたんですか」
「やはりこれに名前を書いて燃やしましょう」
私の元婚約者に関して憎しみが増していた。
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