54 / 123
41悪夢の中で①
しおりを挟む私は誰かの為にじゃなくて私自身の為にする。
「もう一度問う、そなたに覚悟はあるか」
「はい」
これまで私はどんなことがあっても自分の決めた道に責任を持って来た。
「折り合いをつけて自分の信じた道を進んできました。だから今度も」
私が選んだ道なんだから。
「ならば行くがよい。この先に待っているのは絶望か希望か」
また視界が暗くなる。
そして次に目覚めた時は真っ暗な世界だった。
「ここは何所?」
海の中のようだった。
息苦しくて重苦しい。
「女神様は何所?」
当たりを見渡しても光が見えない。
「汚らわしい」
「え?」
誰かの声が聞こえた。
「貴様も一緒に死ねばよかったのに」
私を蔑むような声。
「本当になんて役立たずなの」
「生きている価値もない」
この声は…
「ギョーム」
私の目の前に現れたのはギョームに元姑や舅だった。
「一人生き残って目障りな」
「一緒に死んでくれれば良かったのに」
私を邪魔呼ばわりするギョーム。
よく見ると私の体が小さくなっている。
これは…夢?
そう思う中、胸が痛くなる。
体が身動きが取れない。
「何でお前は加護がないんだ!領地がなければ誰がお前なんか」
「ぶどう畑さえなかったら誰が…」
「我が家の疫病神…貴族にもなれない癖に」
罵倒を続けられ私は動けない。
何かが体を縛っていることに気づく。
「うっ!」
胸に何かが刺さるような痛みを感じた。
「胸に刺さっているのは針?」
体は黒いツルに拘束され動けないでいる。
三人は私を嘲笑い罵倒を浴びせる中、今度は別の人が現れた。
「あんなのが領主だなんて」
「この先不安しかない」
「最低な領主だ」
領民の皆だった。
幼い頃から私を蔑んだ目で見ているのは知っていた。
領地を拡大することばかり言う彼らに私は難色を示したが、彼らは領地代行を理解していないと言われ、領民が困らないように作物を育てた。
増税にならないように進言しても。
「所詮は百姓か」
「百姓貴族だなんて」
何一つ喜ばれなかった。
作物で領地が潤ってもお金稼ぎにならず、冷たい目で見られた。
加護のない貴族令嬢は価値がない。
美しくない私は愛されない。
嫌という程思い知らされた。
その一方で。
「薬草をもっと…」
「税を安くしてください」
私に対する要望は日増しに酷くなる一方だった。
できることはした。
でも、できないことがあれば決まって彼らはこういうのだ。
751
お気に入りに追加
2,434
あなたにおすすめの小説

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。


結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め

わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい
よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。
王子の答えはこうだった。
「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」
え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?!
思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。
ショックを受けたリリアーナは……。

(完結)無能なふりを強要された公爵令嬢の私、その訳は?(全3話)
青空一夏
恋愛
私は公爵家の長女で幼い頃から優秀だった。けれどもお母様はそんな私をいつも窘めた。
「いいですか? フローレンス。男性より優れたところを見せてはなりませんよ。女性は一歩、いいえ三歩後ろを下がって男性の背中を見て歩きなさい」
ですって!!
そんなのこれからの時代にはそぐわないと思う。だから、お母様のおっしゃることは貴族学園では無視していた。そうしたら家柄と才覚を見込まれて王太子妃になることに決まってしまい・・・・・・
これは、男勝りの公爵令嬢が、愚か者と有名な王太子と愛?を育む話です。(多分、あまり甘々ではない)
前編・中編・後編の3話。お話の長さは均一ではありません。異世界のお話で、言葉遣いやところどころ現代的部分あり。コメディー調。

傷物にされた私は幸せを掴む
コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。
(ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる