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閑話 身勝手な輩②
しおりを挟む王都全体が大混乱になっている状況で王都から離れようと考える者が増えている。
ただでさえ王宮勤めの使用人は負傷し、代わりになる者がおらず人員が不足している中国王は自分の心配ばかりだった。
「離宮は不便だ。侍女も若い娘はおらんのか」
「現在の状況ではこれ以上の人員は」
「それを何とかするのがお前の仕事だろう。年増の女では夜が困る」
(このエロ親父が!)
宰相はまともに睡眠を取ることもできず、食事だって必要最低限のものばかりなのに、国王は自分の欲望ばかりだ。
挙句の果てには…
「欠陥品になった王妃等、早々に幽閉しろ…見舞いに来いと煩いんだ」
「陛下…ご自分の奥方に」
「何を言っている?傷物の妻など邪魔だけだろう?」
さも当然だと言わんばかりの発言に絶句した。
公の場では仲睦まじい夫婦だと言われているが、国王は数多の愛人を囲っている。
建前では世継ぎの為だと言うが、国王の欲望を満たす為だ。
浮気は男の甲斐性と考えるのが先々代からの考えで、女性は男を満足させるだけの存在としか考えていない。
宰相も女性を軽視しているが…
あくまで心の中で留めているが、国王は人前で堂々と失言を繰り返す。
「早くなんとかしろ。とにかく私の生活だけでも早急にな」
「…承知しました」
「被害が少ない貴族から物流を届けさせろ」
「しかし、今の時期は…」
「知った事か。王家に尽くすのが貴族の役目だ。その為に命をかけるのは当然だ」
貴族ならば王家に尽くすのが当たり前だと思い込んでいる国王に宰相は呆れて何も言えない。
利己的な宮廷貴族は自分のことだけだ。
領地持ちの貴族だって王家への忠誠よりも最優先は自身の領地と領民を優先するだろう。
国王に信頼も期待もしていないのだから。
「ならば陛下が命じてください。さすれば従うでしょう…直筆の」
「代筆でいいだろう。無礼な」
「陛下直々であれば、喜び、涙を浮かべて協力するでしょう。何卒お願い申し上げます」
宰相は下げたくもない頭を下げながら思った。
(少しは働け!)
直筆の手紙を送ったとしても意味はないが、ささやかな抵抗だった。
ここですべてを丸投げさるは耐えられなかった。
同時に思い知ればいいとさえ思ったのだ。
愚王なのに聖王だと思い込んでいる勘違い王がどれだけ周りから信頼されてないことを身を持って教えようとしていたのだった。
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