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閑話 身勝手な輩①
しおりを挟む予測のない地震により人々は震えた。
これまでの天災とはあまりにも違い過ぎて対応ができない者が多かった。
それというのも、一部を除いた者達は災害の対策ができていなかった。
緊急時の食料の確保に、災害が起きた時の救援、救助活動を疎かにしていた。
王都を襲った地震の影響で多くの人が負傷した。
幸いまだ死人は出ていないが、王都内の病院はパニック状態で、国中の治癒を集めるべく書状を出したのだが、未だに治癒師は二割程度しか集まらなかった。
「宰相閣下、地方の治癒師は魔物の出現により足止めを」
「薬師もです」
「タイミングが悪すぎた。この時期はBランクの魔物が森から出て来ると聞く」
地方に散らばる治癒師は魔物出没する時期には王都に来ることは避けていた。
護衛になる騎士も派遣が難しく、何より魔物の出現が増えることもあり、危険を避けていた。
中央神官も治癒師が非戦闘員であることを考慮しての事だ。
「我が国には白魔術師はおらぬ…故に治癒師がいない場合は薬師、薬草師に頼るしかないが」
「薬草師は廃止になりましたので…」
十年前に、王が医師や薬師がいれば薬草師なんて不要だと廃止となった。
故に薬草師は一人も国にいない。
元薬草師は薬師に転職したし、他の薬草師は国を出てしまっている。
Bランク以上の薬草師は皆高齢者で、理不尽な理由で職を奪われた後に国を出た後王も貴族も大臣も行方は知らなかった。
「既に王都の薬師は働き過ぎで倒れております」
「くそっ…何だってこんなことに」
宰相は頭を抱えるも、ここで的確な指示を出さなくてはならない。
「宮廷貴族から早く対応しろと抗議が」
「不断なにもしない癖に!」
宮廷貴族は何もしない癖に文句ばかり言う始末だ。
領地持ちの貴族はこう言った時は多少は対応できるが彼らはまるで状況を理解していない。
とにかく前の生活に戻りたかった。
今の状況は悪夢だと思い込んで現実逃避しかしていなかった。
「宰相閣下…」
「とにかくこのままでは王都はもたない…比較的被害の少ない領地を探すんだ。特に食料だ!」
「はい!」
文官達は走り回り、昼夜問わず働く。
そんな中、一人何もしない人間がいたのだった。
「宰相!一体いつまでこうしていなければならないんだ」
「陛下…」
「私にあんな狭い離宮で過ごさせておいて…貴様は何所まで出来損ないなんだ」
この国の王だった。
本来ならば王が真っ先に対応しなくてはならないことを宰相に押し付けて命令だけしていたのだった。
(このクソ王が!)
宰相がどれだけ大変な思いをしているかも知らない。
命令だけして踏ん反り帰り、保身の事だけで国や民なんてどうでもいい男に苛立つ宰相だったが、今はくだらないことに時間を浪費したくなかったが、空気を読めないこの男は更に問題発言をするのだった。
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