上 下
17 / 101

13蛇と卵

しおりを挟む





ノームと食卓を囲んでいるとロープが落ちていたと思いきや。


「ん?動いているし温かい」

「アンリ…それは」


「あっ、蛇だ。小さくて可愛いな」

「いや、そうじゃなくてだな」


こんな季節に蛇がでてくるなんて珍しいな。
それにしても随分と弱っているな。


前世では普通に蛇もいたから特に気にしない。
蛇が怖くて農家やれるかってのよ。


「おーい、大丈夫か」

「いや、だから」

「そうだ。君もおいでよ」


蛇だから肉食系かな?
ネズミとかがいいのかな?


「あれ?干し肉齧ってる」

「ああ」

「ねぇ君、それ堅いでしょ?」


弱った体に干し肉はいいのかと思いながら私は果物を差し出すと目が光った。


「食べているな」

「うん、丸のみだ」

特に驚いたのは大きめのぶどうを丸飲みした。

驚きはしないけどね。
蛇なら丸飲みできると言うし、実際見て来た。


「カボチャを食べだしなたな」

「へぇ、ベジタリアンなんだ」

鳥や小動物は食べると聞いているけど、野菜も食べるんだ。
やっぱり剣と魔法の世界だから異なるのかな?


「こっちの野菜も食べる?」

「シャー!」

舌を出して頷く。
うんうん、私の言葉を理解するなんてやっぱり野生の動物はかしこいな。


一人納得をしていると背後からポンと肩を叩かれる。

「イチロー?」

何だろう。
気のせいか生暖かい表情で肩を叩かれた気が。


まぁいっか。
私は細かいことは気にしない。


「シャウ!」

「ん?玉子?」

随分と大きな卵だな。

「これくれるの?」

こくんと頷く白蛇君はじっとぶどうを見る。

「交換?」

「シャー!」


よっぽど気に入ったのか。


「じゃあ、バスケットに」

果物ならなんでもいいのかな?
ぶどうを沢山用意してお見舞い用のフルーツ使用にしてみた。


「どうぞ」

「シャー!」

「へ?」


バスケットを差し出すと玉子を渡された。

「くれるの?」

「シャー!」

「わぁ、今日の晩御飯はオムレツだ!」

「いや…それは」


まだ温かいな。
普通の卵よりも大きい。

「ダチョウのみたいだな」

温もりを感じながら卵を抱きしめると白蛇君は器用に背中にバスケットを乗せて背を向ける。

「なんか地面光ってない?」

「ああ、巣に帰るのだろう」

「でもなんか…」


地面に光の線が繋がりまるで螺旋を描くように魔法陣が出来上がる。


そしてちゃぽんと音がして白蛇君は消えてしまった。

「何これ」

「巣に戻ったんだ。彼らは魔物であり、神獣の化身だからな」

「しんじゅう…」

そんなすごいものだったの?
いや、白蛇は病気を治してくれる神様だってじいちゃんが言っていたけど。


でも…まさかね?


「それよりもその卵なんだが」

「うん」

「食用じゃないから食べられないぞ。たぶん…」

「え!」

食用じゃないの?
食べられると思ったのに残念だ。


「なら育てて卵を産んでもらおう!」

「魔物でなければな…だが鶏とは限らないぞ」


きっと大きな鶏だろうと思ったが、この卵が後にとんでもないものだったとはまだ気づかなかった。




しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉
恋愛
 公爵家令嬢であるリリアローズは侯爵家長男のウィリアムと婚約を結んでいる。  父親同士が親友で、母親同士も気が合った為、両家に子供が出来たら婚約させる約束をしていた。  幼馴染であるウィリアムの優しさに惹かれていたリリアローズ。  このまま結婚まで順調なら進むと思われていたが、最近妙に公爵家に来ているはずのウィリアムと会わない。  不思議に思ったリリアローズはある日、姉の部屋にウィリアムが入っていくのを目撃してしまい・・・。 ********** たま〜に、自分で何を書いているか分からなくなり、よく分からない文章を書いている場合があります。 生暖かい目で見てやってください(泣)

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

「公爵令嬢にプロポーズされたので婚約を破棄します」って、そりゃないでしょ!

ネコ
恋愛
子爵令嬢のメリーンは、男爵家の令息ジョンソンと政略結婚をするはずだった。 結婚式を直前に控えたある日、世界中の国々を旅していた公爵令嬢のセレナが帰国。 セレナの帰国を祝うパーティーが開かれたのだが、そこでセレナはジョンソンに一目惚れ。 衆目の中で「私、ジョンソンと結婚するわ!」と宣言してしまう。 メリーンとの結婚が決まっている以上、通常であればジョンソンが断れば済む話だ。 しかし、ジョンソンは「分かりました!」とその場で承諾してしまう。 そして、メリーンに「子爵家より公爵家と繋がるほうがいいので、すまん!」と婚約破棄を宣言。 誰もが衝撃を受けるが、絶大な権力を誇る公爵家には逆らえず、その場は終わってしまう。 メリーンの両親も「不運だったな」とメリーンを慰めるが、彼女の気は済まなかった。 「たとえ政略結婚でも、顔に泥を塗られて『はい、そうですか』とはなりませんよ」 報復に動き出したメリーンは、手始めに王家まで味方につけると、伯爵家や侯爵家とも連携。 王国史に残る一大政争を引き起こし、公爵家と男爵家を破滅に追い込む。

完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。

音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。 どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。 仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。 「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...