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閑話 欲深き者たち②
しおりを挟む表向きは追放ではなく婚約破棄された哀れな令嬢に住む場所を与えて心穏やかに過ごせるようにと配慮した国王と元婚約者ということで噂を流しあとくされなくぶどう畑を手に入れたのだが、ほとんどの人間は知っていた。
国王の欲望故だということを。
だからと言って周りは同情をしなかった。
加護を持たない貴族の令嬢に使い道はない。
恨むならば加護を得なかったことを恨むべきだと思っていた。
社交界に出ていないアンリは友人もいなかった。
支えてくれる友人もいないのだが、唯一アンリの傍にいたのはゴーレムぐらいだった。
美しい使い魔が多い中、ゴーレムなど時代遅れだった。
アレンドール王国では絶滅した魔物で見た目も悪くしかも、アンリが使役しているゴーレムは手乗りサイズなので使い物にもならない。
豊穣の女神の加護は国に何の役にも立たないことから多くの貴族は疎んじた。
故に、アンリが何所で行き倒れになろうとどうでもいいのだ。
加護のない出来損ないの令嬢が国の重要な領地を持つなど許されない。
だから追放したのだが…
アンリを追いやったのは彼らだけではない。
追放に一躍買ったのは、領民たちだった。
本来なら味方にあるはずの領民はアンリを裏切った。
ギョームの恋人は光魔法の保持者だった。
治癒師としても優秀で、ぱっとしない加護しか持たないアンリよりもずっといいと保身に走ったのだ。
貴族令嬢としても見目麗しく、常に美しく着飾っている方が良い。
言い方は悪いがアンリは素朴過ぎた。
そして優しすぎたことが原因になった。
貴族として平民を導くことはできないし、後ろ盾がしっかりしている方が今後も自分達の生活を守ってくれると思ったのだ。
その為、彼らはアンリの悪い噂をばらまき社交界に出ないのはアンリの意思であること。
そしてギョームを縛り付け恋人との邪魔をさせている等と吹聴したのだ。
国王はここまえカリスマ性のない領主の娘はいない。
やはり価値もないのだと笑みを浮かべた。
国の為にいなくなってもいい。
魔物の餌になるか苦しみのあまり自害してくれた方が誰もが喜ぶと思った。
「これで邪魔者はいない…あの領地は!」
欲に溺れた国王はあの領地が欲しかった。
どんな手を使ってでも。
アンリが死のうがどうなろうが知った事ではない。
博愛主義のアンリの父を疎ましく思い、どんなに冷遇しても動じないアンリが不快だった。
最後はギョームに未練があり泣いていたと聞いた時は心の底から気が晴れたと思う程に心が歪んでいた。
「これですべてが…」
何も上手く行くと思った矢先のことだ。
「陛下!」
「何だ!」
いきなり床が揺れ出した。
「陛下!こちらへ!」
「くっ!」
大きな揺れに困惑する国王と、宰相。
傍いた近衛騎士が二人を守ろとするも、柱が倒れて来たのだった。
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