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11幸せのおすそ分け
しおりを挟む少し前まで荒れ放題だったこの地は、見違えた。
ノームがくれた種のおかげで野菜は恐ろしいスピードで成長し、野菜だけでなく果物もだ。
「すごい!これが魔法なのね」
「いや、いくら緑の魔法でもここまでは…ここは聖地なのか?」
いい領地を貰ったわ。
数年前までは震災や災害が多く、天候もコロコロ変わるし人が魔物が人を襲うことから住むことは愚か、旅人もここを通らない。
だけど隣国に渡るにはここを通るのが一番だった。
国内だけど地図では国から切り離されており、国王も、貴族も見放した領地だ。
だからなのかな?
「こんなに素敵な地なのにもったいないな」
「いや…君だけだよ。そんなことを言うのか」
「え?」
だって、大自然で、空気も美味しいし。
「可愛いワンちゃんもいるし」
「いや…って!それは…」
最近は野生の動物も姿を見せるようになった。
「可愛いな…」
この世界にも柴犬っているんだ。
シェパードもいるなんて。
「おいで、おいで…干し肉美味しいよ」
「クゥーン」
「ワフっ!」
癒しだわ。
すごく可愛いな。
「いや、その獣はだな…」
「わぁ!尻尾振っている!可愛い!」
前世でも番犬を買っていた。
ジャーマンシェパードと柴犬だった。
畑に捨てられていたのをお祖父ちゃんが拾って番犬にしたんだっけ。
「本当に可愛いな」
「アンリ、そんな無防備に触ったら噛まれ…」
「歯も綺麗ね」
「嘘だろ…」
口を開けて私に触れさせてくれるなんて大人しいな。
野生の犬ならまず噛むだろうけど、さっきから尻尾を振り振りしているから大丈夫な気がした。
「ワンワン!」
「干し肉だけじゃ足りないの?まっててミルクがあるから」
例の袋からミルクを取り出す。
「アンリ、君はすごいアイテムを持っているんだな」
「父の肩身なんだ」
犬は人間が飲むミルクは大丈夫かな?
山羊のミルクなら乳製品のアレルギーの人は大丈夫だけど。
「アンリ、ミルクは問題ない」
「でも…」
「彼は大丈夫だ」
確信があるような言い方だった。
アレクが大丈夫だと何度も言うので試しに少しあげることにしたが。
「ワン!」
「え?」
瓶を加えて一気飲みした。
「ダメだよ!」
「すごい飲み方だな」
全部飲みほしたワンちゃんは満足したのかげっぷをした後にごろんと寝転がった。
「ワフ…」
「え?お腹をかけってこと?」
「なんて偉そうなんだ」
お腹を差し出されてかいてポーズをされたのでおかいた。
すると気持ちよさそうにした。
「クゥーン」
もう一匹のワンちゃんもお腹を差し出した。
「これでいい?」
「ワフ!」
二匹のお腹をかくとすごく気持ちよさそうだ。
ああ、これが犬の癒し生活というものか。
癒される。
ずっと触っていたいかも。
ほっこりした気持ちだった私はアレクが頭を抱えているのに気づかなかった。
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