百姓貴族はお呼びじゃないと言われ婚約破棄をされて追放されたので隣国で農業しながら幸せになります!

ユウ

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10大地の恵み

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移住して一週間。
私は大自然の神秘をひしひしと感じていた。


ノームから貰った種は奇跡の種だった。
種を蒔いて水をあげて三日で野菜は収穫時になった。

野菜だけではない薬草も豊作だ。

「流石小人さん!神様!」

「いや、ノームは地の妖精だ。そもそも今では妖精、精霊達の森では作物が育たないことで困っているはずだ」

「でもノームって神様だよね?」

「正確に言うと妖精だ。精霊の下であるから…」


この世には四大精霊と呼ばれる偉い精霊が存在する。
その下に様々な姿をした精霊が存在する。

高位精霊と契約することは加護を賜ることになる。
故に貴族の間ではより多くの精霊と契約を望みあの手この手で契約をしようとしていた。

ただし精霊、特に高位精霊は気難しいと言われており気位が高く美しい人間を好む。


精霊の美しいというのは外見はもちろんの事血筋や心を意味するらしい。


らしいというのは、幼い頃からギョームが言っていただけだ。
後は元姑が精霊を好む女性像は私と正反対の女性だと何度も言っていた。


うん、否定はしないな。
私は自分の容姿を理解しているし自意識過剰じゃない。

「君は美しいから妖精に好かれやすいかもな」

「ほわい!」

「ほわ?」

一瞬英語で言ってしまった。
キョトンとするアレクが少し天然さんで助かった。


「アレク、目が悪いのね」

「俺の視力は両方ともに問題ない。祖国では千里眼だと言われている」

それってどんなのなの?
目には自信があると言いたいのは解ったけど。


「君は美しい」

「いや、美しくないから。芋草娘だし!」


私の手をぎゅっと握るアレクは至近距離で言う。

「君の手は素晴らしい。美味しいご飯を作れる」

「そっちか!


私のときめきを返してくれ!
一瞬ときめいてしまったんだけどね!


本当に一瞬だけど!


「俺は見た目が綺麗でも心が汚い人間は美しくないと思うぞ」

「はぁ…」

「君は見ず知らずの俺を家に招き入れ食事を振舞ってくれた…このご時世で底なしのお人好しだ」


食べ物が食べられない辛さは相当だ。
私は前世で不作の時期に満足な食事がとれなくなった事がある。


どれだけ苦しかったか。


「食べたくても食べられない人に食べて欲しい…百姓の本懐だよ」

「やっぱり君は美しい」


アレクは変わった人だ。
見てくれは質素な装いだけど作法がしっかりしている。


「アンリ、薪の予備は大丈夫か?」

「ありがとう。後は…」

「こういうのは男がするべきだ」


気が利く人だ。
私はこの方パパ以外の人でここまで至れり尽くせりだったことはないので少しなれなかった。


「アレクは優しいね」

「普通だろ?」

「私、父以外でこんな風にお姫様扱いを受けたの初めて」

バキッ!


「え?」


何かが折れる音がした。


「お姫様扱いだと?」

「えっ…うん」


優しい笑顔のアレクの表情が険しくなった気がしたけど気のせいだよね?
すぐに笑顔に戻ったのだから。



別に変なことは言っていないはずだ。



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