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7桃太郎
しおりを挟む巨大な桃を捕まえ私は興奮気味で大きい包丁を取り出す。
通常は葉物か果物用と言いたいけど、大きいからきっと堅いかもしれないと思った。
「くくっ…大きな桃」
きっと美味しいはず。
早く食べたい衝動を抑えきれなかった私は勢いよく包丁を振り上げる。
「いただきます!」
桃を切ろうとすると。
桃は勝手に開いた。
しかも中に人がいるではないか。
「桃太郎だ…」
桃の中に人がいた。
赤ん坊ではなく痩せこけた少年だ。
「桃…違ったんだ」
だけど私の感想はこうだ。
折角巨大な桃だと思ったのに、残念だわ。
「でもこの桃…食べられないかな?」
私の問いかけにポンと肩を叩かれ首を振るイチロー。
ダメだってことか。
「とりあえず運ぶか」
このままでは死んでしまう。
ゾンビのような顔色をしているし、こんなにやつれてしまって可哀想だ。
お腹を空かせている人にはご飯を…
「美味い!美味いぞ!」
「それは良かった。お代わりは?」
「特盛で!」
あの後家に連れて帰った後に桃太郎さんは意識を取り戻した。
ご飯の香りで目を覚ましたようだ。
ようするに空腹で行き倒れていたようだけど、何で桃に入っていたんだろうか。
気になることは多かったが、本人はご飯に夢中だった。
「ちゃんと味がする…」
「普通でしょう」
「くっ、乾燥してない野菜なんていつ以来だ」
「乾燥…」
「食事はほとんど乾燥しているものだ。後は兵糧だ」
彼の言う兵糧とは丸い物体の味は悲惨であるあれか。
忍者食とも言われているそうだ。
「こんな豪勢な食事は何時以来だ。米が美味い…ネギみそはないのか」
「え?」
この国の人は味噌を好まない。
一応あるにはあるけど、見た目があれだから毛嫌いをしっている。
「俺はネギミソが大好物なんだ」
「そうなんですか…」
「ああ、おにぎりにはネギミソが一番好きだ。その次は梅干しだ」
梅干しは清の国とよばれる東の国で食べられている。
前世では当たり前に食べていたけど。
この国では好まれていない。
なのに何故桃太郎さんは…
もしかして清の国の人かな?
「はいどうぞ」
「ありがとう」
食べ方も綺麗だし、お作法も綺麗だ。
貴族の人なのかな?
だとしても、貴族の人が桃に入って旅をするなんて変だし。
人には事情があるのだから、詮索するのは止めよう。
うんうん、そうだ。
言いたくないかもしれない。
「俺はアレクだ」
「アンリです」
お互いの名前を名乗った。
もう貴族ではないのだから家名を名乗ることはしなかった。
アレクも特に何も聞かずにお代わりを強請り、その日はご飯を食べて一夜を過ごすことになるのだった。
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