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5理想的な僻地
しおりを挟む王都から離れた僻地。
人里から離れ廃墟となっていると言われており、荒れ放題の領地。
作物も育たず、冬は寒く、夏は暑く商人も近寄ることがない。
物流もここまで届くことはなく、盗みに入る人もいない。
何故なら盗むようなものがないからだ。
村もなく、あるのは荒れ放題の畑ぐらいなのだけど。
「広い!すごい!」
私からしてみればお宝の領地だ。
荒れ放題の畑は手入れをすればいいし、廃墟となった遺跡がある。
中に入るとかまどがある。
木道の小屋もあるし、補強をすればなんとかなる。
「あれ?この木造」
手で触れるとなかなか良い作りだ。
暖炉の作りもしっかりしているし、パンが焼けそう。
壊れた水車もあるし趣があって素敵だわ!
「もっと最悪な家を想像していたけど得しちゃった」
とりあえず寝る場所の確保と、雨風をしのげるようにしなくてはならない。
「イチロー、今から大工作業に取り掛かる」
私が敬礼をすると一緒に敬礼して、作業に取り掛かる。
力持ちのイチローは仕事も早いして、一時間で環境を整えることができるだろう。
「こんなものか」
いい働きをしてくれるイチローのおかげで三時間程度で作業は終わった。
「とありえず、この土地神様にご挨拶しないとね」
祠があればいいんだけど。
あるわけないか?
「イチロー、この土地のご神体っていないかな」
あたりをキョロキョロと見渡すと、頬に花弁が当たる。
「花?」
風が吹く方を見ると、私は導かれるように歩くと大樹が見えた。
「わぁ…大きい」
立派な大樹だった。
こんなに見事な大樹は見たことがない。
「でも亀裂が入っている…」
触れると不思議だわ。
僅かに温もりを感じた私はここにお供え物をすることにした。
「この地の神様、本日よりお世話になります。よろしくお願いします」
とりあえずお米と果物を備えることにした。
「どうかお守りください」
傍には教会もお寺もない。
神様にお祈りする場所をここにしよう。
「さて…ん?」
大樹から離れようとしたらキノコが生えていた。
「あれ?変わった品種だな…傘がすごく大きい」
折角だし、今日のおかずにしようと思った私が手を伸ばすと…
「え?」
小人さんだった。
「小さいお爺さん?」
キノコの陰に隠れているのは小さなお爺さんだった。
ドワーフのお爺さんよりも小さい。
私が知る小人さんとは違うけど白雪姫に出て来るよな感じだ。
「シャー!」
「わぁぁぁ!」
小人さんは杖で私をポカポカ殴り出した。
「いたた!何?」
「シャー!」
何かに怒っているのか今度は石を投げだした。
「痛い!小人さん何で…」
何か怒っているようだったけど、何を怒っているのか解らなかったがもう一人の小人さんが現れてキノコをぎゅっとしがみついていた。
「あの…小人さん。良かったらどうぞ」
もしかしたらと思い、果物を差し出すと石を投げるのを止めてくれた。
食料を奪われると思ったのか。
もしかしたらここは小人さんの陣地だったのかもしれない。
「ごめんなさい小人さん、ここは貴方の縄張りだったんですね」
無言であるが、少し間をおいてこくんと頷かれ、私はお詫びを込めて他にも穀物を差し出した。
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