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2行き倒れの老人
しおりを挟む強制的に邸から放り出された私は徒歩で王都を出ていく羽目になった。
所有していた馬車も奪われ、荷物はほとんどない。
「行こうか」
私の肩に乗っているゴーレムが合図をする。
普段は手乗りサイズであるけど、本当の姿は違うのだ。
「元のサイズに戻っていいよ」
ゴーレムの一人が地面に着地をすると同時に地面には魔法陣が描かれる。
主の合図と共に元の姿に戻るのだ。
「少し歩かないといけないの。旅費を浮かせたいから私を乗せて移動して」
こくんとうなづき、私を肩に乗せてくれる。
ギョームはゴーレムの仮の姿がしか知らないのだけど実は巨人が本来の姿だ。
「まぁ、気長に行きますか」
ゴーレムことイチローは私を肩に乗せて落とさないように歩いていく。
ゴーレムであるイチローは森に入っても魔物に無暗に襲われることはないので安心だから魔物の森に入って近道ができる。
「とりあえずこのままじゃ無一文だから、ギルドに行こうか」
ギョーム達には身一つで追い出したと思っているけど、ちゃんと荷物は常に持ち歩いていた。
「パパからもらった魔法の袋…ずた袋だ」
見た目はとても汚くてボロボロだけど、この袋は何でも入る。
普段はこれに野菜を入れて保管しているのだけど、野菜以外もたくさん入る。
しかもこの袋、中は特殊な空間になっていて肉や魚を入れると腐らない。
冷蔵庫使用になっており、しかも重くないと来た。
聞けば我が家の家宝だ。
「ギルドに行ったら野菜を売ろう…わずかだけど真珠もあるし」
こんな時に役に立つとは思わなかった。
「大した金額にはならないだろうけど、パンを買うぐらいはできるだろう」
そう思いながらイチローと一緒に旅の道中を堪能するとお爺さんが倒れていた。
「うっ…」
「お爺さん!どうしたんですか」
「腹が減ってうごけんのじゃ」
よく見ると顔色が悪い。
何日も食べていない栄養失調な顔色だ。
「イチロー、急いで火の準備を」
ずた袋から取り出したのは非常食用のおにぎりだ。
おにぎりを焼いて焼きおにぎりと、簡単な汁ものを用意した。
「飯…」
「お爺さん、どうぞ」
「いいのか…」
「はい」
急ぎだからちゃんとしたものは用意できなかった。
ほうとうと焼きおにぎりだ。
とにかくお腹にたまる物を用意した。
「グズン…」
「お爺さん、お口に合いませんでしたか?」
「違うんじゃ…初めてこんなに優しくしてもらったんじゃ」
よく見ると傷だらけだ。
手も包帯で巻かれていて、指は曲がっていた。
このご時世、足がない人間は少なくない。
体格からして人外かもしれない。
「お爺さん、お酒も良かったらどうぞ」
「良いのか…」
「はい」
私が作ったお酒だ。
試作品だけど味は保証する。
「透明色の酒…まるでエルフの酒のようだな」
「お米で作ったんですよ。焼きおにぎりに合いますよ」
お米と日本酒は相性がいい。
ワインよりも癖がないけどアルコール度数が高く、以前は試しに作ったけどギョームは見た目が地味だからと捨てられたけど、私はこっそり作っていた。
「美味い…美味いぞ!」
「そんなに気に入ったのなら差し上げます」
苦労して作ったものを美味しいと喜んでもらえるのはこんなに嬉しいことなんだ。
お金では買えられないのだから。
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