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1婚約破棄と追放

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当てが外れたのは言うまでもない。
ただ当時は、私の実家の領地はかなり潤っていた。


果物園では毎年沢山の果物が収穫された。
特にブドウの品質は国一番だと言えるだろう。


アレンドール王国では特産物が赤ワインだ。
その赤ワインの出荷率が一番多いのが我が領地で、他の領地ではここまでのブドウが作れなかった。


水の品質も良く、国の7割の赤ワインを占めている。
その為ギョームの実家が欲しがったのは果物園だったのだ。


その次に海岸沿いの真珠やサンゴ礁だ。
こちらもお金になるのだけど、我が家の海岸沿いの方が真珠が大きいのだ。


まぁパパは宝石にはあまり興味がないので取れた宝石を売り、家畜を増やしていた。

曰く、宝石は食べられないから最低限でいい。
お金をあまり持ちすぎると人を狂わせると考えている人だった。


食い意地はあれど、物欲が少なかった。


だからなのだろうか。
ころりと騙されてしまったのかもしれない。



婚約に関しても話だけで、パパは乗り気じゃなかった。
なのに何故かいつの間にか婚約していることになって、パパが亡くなってから正式なものとなったのだけど。


婚約者のギョームは心底私を毛嫌いし嫌がった。


「感謝するんだな。親を亡くしお前を引き取ってやるんだ。でなければお前は野垂れ死にだ」

「少しでも反抗的な態度を見せれば解ってますね?」


ギョームだけでなくパンデミック家の人や使用人は私をゴミのような目で見て来た。


唯一の救いとなったのは。


「大丈夫だよ」


私が物心つく頃から傍にいてくれたゴーレムたち。
彼らは私に寄り添うように傍にいてくれた。


「泥人形しか使役できない役立たずが!」

「百姓貴族はお呼びじゃない!」

どんなに酷いことを言われても平気だった。


だって所詮は他人の戯言だし、どうせ婚約なんて形だけだ。


というか、あんな男と結婚するなんてないわ。


農業のなんたるかを解っていない。
人の価値を解ってない。


私は加護がある無しで人間の価値は変わらない。
見た目が美しかろうと、齢を重ねれば変わるだろうし。

美しく齢を重ねる方が素敵だわ。


何より食べ物を粗末にする人間は貴族だろうと王族だろうと許せん!


だから婚約破棄をされてもへっちゃらだわ。
むしろ願ったり叶ったりなのだけど、この勘違い男がむかつくわ。


「五年間もこんな出来損ないと婚約してやったんだ。慰謝料を貰いたいのにお前は金もない」

「ギョーム様、そこまで言っては気の毒ですわ」

「君は本当に優しいなジェミリア」


胸押し付け抱き着くどこぞのお嬢様。
胸だけなら牛のような乳だなおい。

私への嫌味か。
ぺちゃぱいの私は胸の谷間がないからね!


「ほら、ご覧になって…震えて泣いているではありませんか」

「泣いても無駄だ。どれだけ俺を愛していようと…だが情けだ。王都のはずれにある東北の領地…あそこに行くがいい。誰も住んでいないからな」

「まぁ、お優しいこと」

「そこで惨めに一人で暮らし、静かに一人で死ぬんだな…ああ、海も近いから父親を思いながら過ごせばいいだろう。荷物は既に処分しているから身一つで今すぐ出ていけ!」



こうして私は身一つで放り出されてしまったのだった。







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