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しおりを挟む「上手く行くはずだったのに!」
「そんな…酷いわお母様!」
ずっと愛されている。
誰よりも愛されていると思って信じて疑わなかったミレーヌは絶望した。
「私はミレーヌが羨ましかった。でも貴女の愛はただ人形を可愛がり、自己中心的な愛だわ。ただ盲目に愛しているだけ、大事にしていなかった」
「そんなの嘘よ!私はずっと愛されて…」
「じゃあ、どうして貴女が間違った事をしても叱らなかったの?」
「愛しているから…」
「甘やかすだけが愛情じゃないわ。時には憎まれる役目をして叱るわ…お祖父様もお兄様も間違った時は叱ってくれた」
「違う…違う!」
泣きながら耳を塞ぎ、シェリラの言葉に耳を貸す事はなかった。
「本当に大切なら、間違った時に怒ってくれるわ。でも貴女はお母様に甘やかされただけ。欲しい物を与えられるだけ。まるで愛玩人形のようだわ」
「私は人形…」
「思い通りだった貴女。ミレアルと同じだから…でも、本当に辛い時に誰も手を差し伸べてくれない」
シェリラの言葉が恐ろしくなる。
ずっと愛されていたからこそ、何でも言う事を聞いてくれた。
「お父様は貴女に何度もダメな事を言ったけど、ミレアルは甘やかすだけ。我儘を聞くだけで本当に愛されていた?」
「でも…私は」
「お祖父様は貴女に本当に冷たくしていた?何故冷たくなったのか考えたことあるの?」
シェリラの言葉に耳を傾ける事ができなかった。
幼過ぎたミレーヌは全てを理解できなかったからだ。
理解できなくても、もう誰も助けてくれない事だけは理解できた。
「あっ…あああああ!」
頭を抱えて叫ぶミレーヌをシェリラは哀れに思った。
(この子も被害者なのかもしれないわ)
ミレーヌを羨んでいた時の自分に言いたい。
決してシェリラは恵まれてなかったわけではないことを。
偏った見方をしていたのはシェリラも同じだった。
「これから貴女は償いの日々が待っているわ」
「そんな…お姉様!お願い助けて!」
「私にはどうする事もできないわ。貴女はこれまで何をしたの?未来の王妃陛下に無礼を働き、貴女の母は隣国の皇族に手を出した」
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「ミレーヌ…」
こんな時になってもミレーヌは自分の保身しか考えない。
母を少しでも庇う素振りを見せると僅かな期待を裏切られた。
「貴女は母を守る気はないの」
「どうして…私が何故そんなことをするの?むしろお母様は私を守るべきでしょ?ねぇ!」
ミレーヌは誰かを思いやる心を育むことができなかった。
欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる欲深さだけが育ち、人として大切な部分を育てる事は出来なかった。
「これが貴女なんですねミレアル夫人」
「シェリラ…」
鏡のようだと言い放ちミレアルの神経を逆なでるのだった。
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