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しおりを挟む二人のけぅてい的な違い。
それは守るものがあるかないかだった。
メティアは祖国の為に必死に足搔き守ろうとしていた。
少しやり方は無茶であるが、胸に秘めるのは国を、民を愛する故の情熱だった。
対するミレーヌが愛しているのはリシャールではない。
「国と民を愛する王女と、自分だけを愛している貴族令嬢」
「その二人は対照的です。メティア姫は我儘で気が強いですが」
「フィディオ様…」
確かに環境の違いもあるが、メティアは常に自分の為に動いていない。
強引で思い込みの激しさは問題があるが、助けたいと言う気になれるし、好かれる性格だった。
「リシャール様も周りに振り回され過ぎたのでしょう。後は判断力が乏しい」
「あまり甥を悪く言いたくありませんが」
「事実でしょう?ですが、今回は全てが間に合ったのです」
出会ってすぐの頃は、優しかったリシャール。
婚約してばかりの頃は心を通わせる事ができると思った。
だが成長する中でミレーヌの事だけを信じるようになった。
「私も悪かったんです。リシャール様に本心を見せなかったのですから。きっと無意識に悟られていたのでしょう」
(私が思う方は誰か…)
不誠実な事をしたのは自分も同じではないか。
何も言わずに解って欲しいと思い、動こうとしなかった過去の自分を悔いる。
「なればこそ、今度こそ終わらせます」
「お姉様…」
「ごめんなさいヴィオレット。これ以上母の過去に縛られて過ごすなんて嫌なの」
もう過去に決着をつけたい。
「ガルセア帝国の事はどうする?」
「どうもしませんわ」
今さらな事なのだ。
母親が元皇女であっても既に関係は切っているし、どうなる気はない。
「ただ私の亡き父の遺族の方の事が知りたいです」
「フェルシモ伯爵家は今も健在ですよ」
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(良かった)
それを聞いて安堵する。
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「フィディオ様…」
「落ち着いたら会いに行きましょう。フェルシモ伯爵夫人は穏やかな方だと聞いております福祉事業を行い慈善活動にも熱心と聞いております」
「はい」
顔も知らない伯母は立派な人だと聞き嬉しくなる。
最良の道を見つける為にもシェリラは動く事を決めた。
「フィディオ様、私はやはりミレアル・ノースライナ―を社交界から追い出す必要があります」
「シェリー!」
「あの人とミレーヌをこのまま社交界にいてもらっては困ります」
これ以上大切なものを奪われる前に。
守る為にもシェリラは鬼になる事を決めたのだった。
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