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しおりを挟む不幸な事が重なったが、ミレアルはアルシオを信じなかった。
傷つきながらも家族を守り奔走する中、本当に不幸だったかはわからない。
フェルシモ家は残り、兄嫁はその後領地代行として立派に責任を果たしたと聞く。
「実は私が立太子した後にご尽力くださったのがリアンティーヌ様です」
「え…」
「恐らく何らかの形でシャルティア様のご息女がシェリラだと知ったのでしょう」
サロンでリアンティーヌと出会った時の事を思い出す。
初対面なのに親し気に接してくれたのはもしかしたら亡き姪の面影があったからなのかもしれない。
「私が真実にたどり着いたのは貴女が亡くなって二年後でした」
「父君も口を割らなかった。既にシャルティア様は皇族ではなくなっていましたし。祖国でも問題が生じていたそうです」
「そうですか」
今考えても過去の話だ。
あの時ガルセア帝国と既に切れていたシャルティア。
身動きが取れなかったリアンティーヌに対しても恨む気はない。
「シェリー、真実を知った時はもう何もかも遅かった」
「お兄様」
「あの女は、全てを知った後にお前を恨み、お前の無実なのは明らかなのにお前を悪女にした。全て解った時に既に手遅れだった」
タイミングもあったのかもしれない。
悪い条件が揃い過ぎて、最悪な形でミレーヌは知ってしまったのだ。
かつて愛した人の子を産んだのは別の女性だと。
「親子そろって底なしの欲深い女だった。父との生活は幸せではなかったと言うのか」
「お兄様…」
「ご自分がどれだけ寄生していたか知らないのですわ。後から真実を知って何の罪もないお姉様とあの女の婚約をすり替えたいと思った…その時に馬鹿な連中に何か言われたのでしょう」
幸せとは誰かにしてもらうのではない。
もっと、もっと手を伸ばし続けて掴んだ際は何もなかった。
「父は負い目もあったんだろう。そして過去に囚われていたのかもしれないな」
こんな状況になってまでミレアルと別れなかったのは負い目故だったからと言って、このままでいいわけではない。
「ですが…」
「前の時間と今では違う。シェリーの出生の真実をしった時期も違う」
「では…」
「リアンティーヌ様がいらしているのです」
真実は明らかになるのも時間の問題だった。
「ですがこのタイミングで何故?」
「メティア様が王太子妃として選ばれたからです。メティア様の姉君はガルセア帝国の侯爵子息と婚約したので。まぁ、お手伝いをさせていただきましたが」
「え!」
影でここまで動いていたと知らず恐ろしくなったが。
「メティア様を王太子妃に相応しいと思ったのは事実ですわ。現にリシャール様の軌道修正は叶いましたし、好奇心旺盛で無邪気なメティア様とあのお馬鹿さんは似ていてもけって的な違いがあります」
「違い…」
言葉に出すまでもなかった。
無邪気さと自由奔放さはあれど決定的な違いは直ぐに解ったのだから。
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