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閑話10過去編ミレーヌ⑪
しおりを挟む「頭の悪い方ね」
不敵に微笑むヴィオレットが更に追い打ちをかけるように言い放つ。
「リシャールは既に廃嫡され、王子ですらなくなりましたの。長らくの失態ですべての貴族が彼を支持しなくなりました。そうなれば廃嫡するか毒を飲むかの選択ですわ」
「何よそれ!」
「先日、貴女が侮辱した女性は我が国と親しいお付き合いをしている方で、王家とも深いお付き合いがあります」
「だから何?」
「頭が悪いですわね。その女性を侮辱する事は外交問題に発展し、同盟を壊す事。案の定その女性は公爵夫人です。貴方は我が国に泥を塗ったのです」
「だからって…」
「しかもあのパーティーは他国の要人も多く、公爵夫人を口汚く罵倒するのを見て、リシャールの評価を決めました。王としての資格はないと」
「でも。そんなの!」
「政治の事を何も解っておりませんのね?リシャールは既に臣下の心が離れていますの。そこで親しい同盟国に見放されましたわ。我が国は今危険な状態…既に国は存続の危機です」
「えっ…」
「このままでは国を乗っ取られるでしょう。故に無能な王子では敗戦国となります。故に私の母の実家の祖国に協力をお願いしましたの」
「そんなの乗っ取りじゃない!まさかわざと」
「人聞きの悪い事を言わないでくださる?私はリシャールに貴女の見せ場を作ってくれと言われたから従ったまで。すべては貴女の振る舞いでこうなったのです」
「だも!」
「そうだ!君の所為だ!」
「そんな!私は悪くないわ!」
こうなっては互いに責任を擦り付ける醜い争いを続ける。
あれ程真実の愛だと言っていた二人に呆れるしかなかったが、ここで同情する人間は一人もいない。
「言い争いは外でしてくださる?騎士達、この二人を」
「「はっ!」」
ヴィオレットの命令で騎士達は二人を無理矢理馬車に放り込み離宮に連行した。
そして二人は古びて手入れもされていない小さな離宮に押し込まれたのだった。
「嘘よ!こんな幽霊屋敷に住むなんて耐えられない」
ミレーヌは全て夢だと頭を抱え叫ぶ。
リシャールは一人部屋の片隅でブツブツ言っているだけだった。
「冗談じゃないわ。こんな所にいたくないわ」
かつて輝いていたリシャールの面影はまったくなかった。
ミレーヌは王子様でなくなったリシャールになんの魅力も感じず早々に離れることにした。
「私は幸せになるのよ。そうよ!」
ミレーヌは離宮から出て行き、ミレアルの元に逃げて行った。
その後ミレーヌの姿を見た者はいなかった。
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