愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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馬車は王宮の裏門を通り離宮に向かった。
馬車の中では誰も言葉を放つことなく静かだった。




「待ってましたよ皆さん」


約束も無しに押しかけたシェリラ達を待っていたかのように迎えたフィディオに驚く。


「来ることは解っていました。人払いはしていいますからどうか楽に」

「申し訳ありませんフィディオ様」


ただでさえ多忙なフィディオに負担をかけてしまった事を詫びるも変わらない笑顔を向けてくれた。

「大事な仕事は前倒しで片付けていますので、ここには誰も入れません。どうか」

「ありがとうございます」


人払いをしていても部屋の外には警備をしっかりしている。
第三者が入って来ることはないのだが、ここまで厳重にする程なのかとも思った。


「三人が一緒にいると言う事は…」


フィディオは砂時計と懐中時計を取り出す。


「これは…」

「この懐中時計は止まっています。壊れているのではなくこの時間では動かないのです」

「この時間…」

「時ですね。この懐中時計が動くのは後ろにですから」

「え?」


時計とは前に進むものだ。
時間が戻ることがない様に針は前にしか進まない。


だが…


「貴女の時間が戻ったのは、ある力を使った故です。私達が持つ四つの時計と懐中時計。この連鎖により特殊な儀式を使って行われるのです」


テーブルに置かれた懐中時計は全く動かなかった。


「シェリラ、見て見なさい」

「はい」


同じデザインだが、色違いの懐中時計は温かかった。
まるで生きているようだった。


「この懐中時計は眠っているんですよ。今は力を失っています」

「何故です?」

「この懐中時計を動かせるのは条件があります。そしてこの時計には大量の魔力と術者の命を対価にしなくてはなりません…悪魔のような時計です」


「命…」


シェリラは嫌な予感がした。
古来より何かを得るには対価が必要だと言われていた。

その先は聞かなくても察することができたのだ。



「フィディオ様」

「どうか聞いてくださいますか?長い話になりますが…私の業を」


そっと目を閉じながらフィディオは語り始める。


長い長い旅の話を。
そして過去から未来、そして巻き戻った世界について語られたモノは悲しくも残酷な世界の話だった。




シェリラが前世の記憶をもったまま何故時間が逆行したか。


そこに至るまでの出来事が語られることになるのだった。



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