102 / 159
88
しおりを挟むその頃シェリラは公爵家に戻って来ていた。
「お姉様!」
「遅くなってごめんなさいね」
今日は週に一度ティナと一緒にレッスンをする日だった。
現在ヴァイオリンのレッスンを受けているティナだが、家庭教師との相性が良くなかった。
先月は五人、辞表を出されたのだ。
その理由はティナが優秀過ぎて自信を無くしたのだ。
「まぁティナ、新しい曲かしら」
「私が作ったのよ!」
「素敵だけど、でもお茶会だったらもっと華やかの方が楽しいと思うわ。舞踏会向きね」
「そう?」
音楽の才能があるティナはプロ顔負けで作曲もしている。
しかしなまじ天才過ぎて困る事もあるのだ。
シェリラは音楽の才はあるが天才ではないが様々なジャンルを好み、演奏家の耳はあるのだ。
故にティナが望むアドバイスがきでる。
対する他の家庭教師のアドバイスはティナの望むものではない。
褒め方も、同じな教師達に対して、シェリラはシチュエーションで分けるべきだと進言した。
他にも専門家では気づかない事や。
どうしたらもっと楽しく聞いてくれるか、様々なアドバイスをしてくれたのだ。
「ねぇお姉様、どうして先生の演奏はつまらないの?」
「え?」
「みーんな同じ音で気持ち悪いわ…あれなら子供でもできるわ」
(ティナ…それはあんまりよ)
才能があり過ぎるのも考え物だった。
ティナは既にプロの音楽家にも勝る程の才能を発揮しているのだが、周りとわせることができないので、ソロでしか演奏ができない。
(困ったわね…)
やる気に満ち溢れ、周りと合わせようと努力をしているのに、本人はどうして自分と同じようにできないか悩んでいる。
シェリラはどちらかというと秀才タイプだった。
「ティナ外に出ましょう。外で花に触れて見ましょう」
シェリラは的確な答えを与えることはできないが、その答えを見つける手助けをするべく。
ある事を思い出す。
「わぁぁぁ!すごいわ」
「見ごろね」
庭園に出て、カモミール畑に向かう。
その傍にも他の草花が咲いている。
「お姉様、どうして薔薇園じゃないの?」
「薔薇園の方が良かったかしら」
野に咲く花に触れながら、ティナは思う。
普段から目にする豪華な薔薇の花とは異なるが、とても綺麗な花だった。
風に揺れるカモミールはとても可憐で。
他の花もすごく綺麗だと思った。
「音楽も同じではなくて?」
「え?」
「この花のように完璧ではない音楽も多いけど色んな音楽があるわ。として咲きかけの花を見て」
ティナはこれまで目に止めなかった花を見て気づく。
(そうか…解ったかもしれない!)
今まで見えないものが見えた気がした。
120
お気に入りに追加
8,091
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

本日より他人として生きさせていただきます
ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる