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しおりを挟む勝気なメティアは本当に明るく社交界での陰口も気にすることなく日々を過ごす。
逆にリシャールが落ち込むのだが。
「男の癖に女々しいですわね」
「君は平気なのか」
「他国に嫁ぐ以上は覚悟の上です。別に毒殺されたりナイフを突きつけて来たわけでもないのです」
「毒殺…ナイフ…」
相当な覚悟で嫁ぐことを決意して来たメティアに迷いはなかった。
「王太子妃となれば命を狙われるでしょう。陰口をたたかれる程度で挫けていられませんわ。王族たるもの国を守り民を導くのが責任です」
「君はいいのか」
「何を今さらな…私達は国民の税金で暮らしております。役目を果たさない等税金泥棒ですわ。無銭飲食と同じ、いうなれば飲食店の食い逃げですわ」
「そっ…そうか」
「世間では真実の愛と言っておりますが、己の立場を放棄して多くの人を傷つけ裏切る行為ですわ。小説の中だから成立するのです」
現実主義な王女は世間のロマンスを否定する気はないが現実との区別がつけれない夢見がちの令嬢が目に付くのだった。
「私達は自由に恋愛する前に責任が伴います。誰かを傷つけて不幸にして幸せになって、その先に何かありますか」
「しかし…」
「しかしではありませんわ。まさかシェリラ様の以外に恋する人がいて婚約解消を?」
メティアの目が冷たくなる。
「違う!そんなことは…」
「私の母は夫がいましたが、使用人と恋に落ちて母を捨てました。そして母は側妃としてお金で売られましたわ」
「えっ…」
過去の事を包み隠さず話しながら真実の愛を嫌悪するメティアは告げた。
「周りは真実の愛と言いましたが、母は商家の娘で政略結婚として婿を迎えたそうですが…母の夫は母の父が亡くなると同時にい結婚前からの恋人を邸に入れて母を追いやったそうです。周りは真実の愛だと言って母を一方的に悪者…悪女にしました。噂なんてそういうもの」
「酷い…」
リシャールはぞっとした。
シェリラと婚約していた頃、ミレーヌとの噂になり、シェリラは心無い噂に苦しんでいたのを後かしら知った。
ミレーヌは婚約者の妹だからと優しく接したし、二人きりでいることも不思議ではないと思った。
だがその浅はかさが招いたのだ。
(なんて事を…)
今さらになって自分の落ち度がどれ程の事をしたのかと思う。
「私は貴方様に寵妃ができても咎めません。王太子妃として…ですが、ご自分の欲望の為ならば許しませんわ」
「メティア…すまない」
「私達は国民の命を預かっているのです。その重さを理解してください」
メティアの過去を知りリシャールは考えを新たにする。
祖国を離れ心細い思いをしているはずなのに見せようともしないメティアを守りたいという思いが芽生えたのだった。
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