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しおりを挟む明朗快活という言葉が似あうメティアはとにかく行動的だった。
正式にリシャールの婚約者としてお披露目を行うも不穏な空気は否めなかった。
「どうして南国の…」
「あんな文明の遅れた国を」
「田舎臭さがにじみ出てるわ」
シェリラが婚約者の座を降りて我こそはと思っていた矢先に、オルレノア王国の王女との婚約に貴族達は動揺した。
婚約を押したのは王妃陛下だと聞かされ、もう一人の婚約候補のヴィオレットが認めるのかとも思ったが。
「ヴィオレット様、お噂は本当ですか」
「そうですわ、こんな…」
早速噂を耳にした令嬢達は直ぐにヴィオレットに聞いたのだ。
「ああ、オルレノア王国の王女様ですわね」
「ヴィオレット様、嘘ですわねよね」
「そうですわ。オルレノア王国は小さな島国でしかございませんわ。しかも王女と言っても…」
シェリラやヴィオレットは高位貴族令嬢だったが、メティアの母親は側妃で貴族ではない。
オルレノア王国も裕福な国ではなく文明が遅れてるので、認めたくなかった。
だからこそ、王族の血筋を持ち、王妃の姪であるヴィオレットが反対してくれればと淡い期待を抱くも。
「オルレノア王国は医療に関しては先進国です。それに彼女自身も政治に明るく、聡明ですわ。王太子妃として十分の資格はございますわ」
「えっ…」
「必要なのは血筋ではありませんわ。メティア様に期待をしておりますの。皆さんも解っていますわね?」
「はっ…はい」
遠回しに余計な口出しは無用と告げ、忠告をする。
「今後は私と姉が傍にてお仕えしますわ。この国を背負われる国母となられるのですから」
「ですが…」
「それとも国同士の外交に傷を作るなんて事はなさいませんわよね?」
「勿論ですわ」
「ええ…」
納得できていない彼女達の表情を見て再度忠告をする。
(とりあえず様子見かしら…あら?)
その場を去ろうとする中、視線を感じる。
(すごく睨んでいますわね…フフッ)
背後からヴィオレットを睨む影が一つ。
(解りやすい事)
睨んでいる相手はヴィオレットが気づいているとは知らない。
(ちょうどいいいですわ。少し苛めて差し上げましょう)
近づいて来る、中立側の貴族達を見てにニヤリと笑みを浮かべた。
この距離からならば十分に会話は聞こえると見越してある事を思いついたのだ。
(見ていないさ、貴女に思い知らせてやるわ!)
悪魔の微笑みを浮かべながらヴィオレットは動いたのだった。
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