愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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シロカが無事に男爵の爵位を得て、正式に専属の侍女となり安堵しながら穏やかな生活を送っていた。


「待ってましたよ」

「フィディオ様」


シェリラを出迎えるフィディオは今日も穏やかな笑みを浮かべるも、雰囲気が少し違っていた。


「どうしましたか?」

「いいえ…」


フィディオはここ最近、オーラがにじみ出ていた。
これまでは美しい美少年という感じだったが少し貫禄がついたと言うべきか男らしさが出てきている。


「本日は貴女に是非見ていただきたいものがあります」

「はい?」


今日はお茶を飲んでその後散歩をする事になっていたのだが。


「こちらを」

「これは…」


見せられたのは先代王妃陛下に、王家に嫁いだ女性の花嫁の写真だった。


「貴女の花嫁衣装に関して相談をしたいと思っていましてね」

「私の…」

「ええ、王弟である私に嫁ぐのでドレスは絹の銀となります」

「絹のドレス…」


どんな身分が高くとも絹のドレスは貴重で持っている者は少ない。
高位貴族でも持っている貴族は少なく、シェリラが今着ているドレスも絹のドレスだった。

クランベル公爵家では絹のドレスはあるが数枚だった。
しかも花嫁衣装が絹のドレスにできるのは王族かそれに近しい身分のみのぐらいだった。

特に銀刺繍が施された絹のドレスは最高級だったのだから。


「銀と白をあしらったドレスならば教会でも貴女をより美しく見せるでしょう。できれば私の愛する百合の花をブーケにしていただきたいのですが…」

「ありがとうございます。私も百合のブーケが良いです」


百合の花はフィディオとの思い出が詰まっている。

「私と貴女を結びつける花ですか」

「覚えてくださったのですね」


「勿論です」


心が満たされるような気持で、望んだ未来はもうすぐ手に入る事を夢見たシェリラは幸せだった。


「王家の結婚式ですが、あまり大きなものにはできません」

「いいえ、十分です」


「そう言っていただけると助かります。リシャールの新たな婚約者を迎えるので王太子妃を迎える準備もありまして」

「え?」


シェリラとリシャールの婚約が解消になった今、他の候補が現れるのは自然の流れであるが。


「先日、ヴィオレット嬢が婚約者を降りられました」

「そうだったのですか…」


これには驚かざる得なかった。


(何故?リシャール様を慕ってたんじゃ…)


前世でライバル関係にあった時から常に完璧な妃になるべく努力していたのでてっきり好意を抱ていると思っていた。


(でも…今生では少し違うのよね)


前世とは異なりヴィオレットはリシャールに対して厳し過ぎると思ったが、シェリラは誤解をしていた。


前世でも現世でもヴィオレットはリシャールを全く愛情を抱いていいないことをまるで知らなかったのだ。


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