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閑話9過去編ヴィオレット②
しおりを挟む話し合いは平行線だった。
子供の癇癪と変わらないリシャールの言い分にため息をつきながらヴィオレットは最終的に折れることになった。
「では、今度の宴に参加をしていただきますわ」
「そうか…」
「ただし、節度を守ってくださいませ。友好国や同盟国の王族の皆様がも参加する宴ですわ」
「嫌味な女だな。そうやってミレーヌを!」
「忠告は致しましたわよ」
リシャールはヴィオレットの配慮にも気づくことなく当日を迎える事になるのだが、その宴で早々に問題が起きてしまうのだった。
「無礼者!なんて節度の無いんだ!」
「これは我が国に対する宣戦布告か!どういう事かリシャール殿下!」
「待ってください彼女には悪気はなく…」
「悪気が無ければ何をしてもよいと?私の妻を娼婦呼ばわりするとは何事だ!」
大事な宴の席で、側妃の一人として宴に参加したは良いが、ミレーヌが無礼を働きあまつさえ侮辱した女性は南帝国の公爵夫人だった。
身分は低く、元は側妻という立場故にミレーヌは侮辱したのだ。
ノースライナ―家や高位貴族の中では複数の愛人を持たない貴族もいる故に、愛人を卑下しているミレーヌは言ってはならないことを言ったのだ。
「本当の事ではありませんか。身分卑しき者がみっともないのに…愛人なんて所詮は殿方の欲望を満たすだけの道具ですわ」
「ふざけるな!何という侮辱だ…彼女は平和条約の証として私に嫁いできたのだ…それを!」
「申し訳ございません」
「言葉だけの謝罪は結構ですわ。このような辱めを受けるとは…リシャール殿下もそうお考えなのですね」
「そのような!」
否定しようも、ミレーヌは謝罪する気は一切なかった。
「貴方達とのお付き合いを考え直させていただかなくては…殿下、寵妃の選び方はお考えになった方がよろしいですわ」
「公爵夫人…」
「王家に入る側妃は政治の武器になるご令嬢がほとんど、その意味をもう一度お考え下さい。これが最後のアドバイスでございます」
遠回しにもう助言はしない。
関係は今夜限りだと言う事だった。
「公爵夫人、この度は誠に申し訳ありません」
「ヴィオレット様、貴女様の心労を思うと言葉もありません。どうかご自愛なさってくださいな」
「はい…」
去り際に労りの言葉をヴィオレッタにかけて背を向けるのだった。
そしてその後、ミレーヌだけでなくリシャールの立場は更に悪化し。
誰もリシャールを支持する者はいなくなってしまったのだった。
ミレーヌが王宮で自分こそが王妃だと触れ回ってしまい数少ない王族派の臣下はリシャールの心から離れてしまい、廃嫡の話が流れ始めてしまったのだった。
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