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しおりを挟む怒りをぶつけるミレーヌは癇癪を起すも、シェリラは冷静だった。
「何があったかは知りませんが暴力を振るうなんて…」
ハンカチでシロカの頭を止血しながらただじっと見つめながら告げる。
「お嬢様、私は大丈夫です」
「すぐに医師を呼びましょう」
傍で寄り添うフィディオがシロカを支えていた。
「猊下!」
「侍女長、すぐに医師を呼んでください」
「はい」
傍にいる侍女に急いで医師を呼ぶように言うも。
「お待ちください。たいしたことはありません。医師を呼ぶ程では…」
「それはなりませんわ。彼女は先ほどまで研修を受け、侍女の試験を合格した者です。公爵家の試験を終えるまでは私の管轄です」
「なっ!」
「いかに前ノースライナ侯爵夫人であろうとも、聞くわけには行きません」
「ノースライナ―?シェリラお姉様のお母様?」
「ティナ…」
タイミングが悪すぎた。
こんな形で知られることになるとは思わなかった。
「何で…お姉様のお母様がどうしてお姉様を傷つけるような事を言うの?噂は本当だったの?お姉様を苛めて邪魔になって捨てたのは」
「ティナ!」
「最低だわ」
シェリラがずっと自分の家族の事をあまり話さなかったから幼いながらに察していたティナ。
高位貴族令嬢が養子に出されるのは色々深い事情がある。
だがその理由は双方の家で利害関係が一致したり、養子され側に子供がいなかったりと理由があるが、クランベル家は男子に恵まれなくとも跡継ぎには困っていない。
だから不思議とも思った。
「夫人会で皆言っていたわ。シェリラお姉様は家族に捨てられたんだって。婚約者を妹に奪われ母親も妹の方が猫かわいがりしていたって…これで納得したわ。この毒親が!」
「毒親…なんて失礼な」
「口を慎みなさい!」
毒親と言われたことに苛立ち、ミレーヌが掴みかかろうとするも。
「それ以上は許しませんよ」
「何するのよ!」
フィディオが腕を掴み、ティナを守る。
「無礼にも程があります。このことはしっかり報告させていただきます。公爵令嬢の傍付き侍女に怪我をさせた罪、そして女男爵となる彼女の顔に傷をつけた罪をね」
「そんな…お待ちください!どうか」
「謝る事もできないのですか。公爵令嬢にも危害与えたのです。私の姪にまで手を上げるとは」
普段穏やかなフィディオが声を荒げていた。
それだけ憤りを感じている証拠でもあったのだった。
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