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しおりを挟むその日からアニシアは変わった。
今まで以上に勉学に励み、家庭教師を増やし手貰えるように願い出た。
「どうしたんだい。無理は良くないぞ」
「大丈夫ですお父様!アニシアは本当の淑女になります!」
「アニシア…ようやく解ってくれたのか」
これまでお転婆が過ぎて冷や冷やしていたが、ようやく解ってくれたのかと涙ぐむ。
「なんて単純なお父様」
ボソッと小さく囁くヴィオレットだったがこっそりアイコンタクトをアニシアと取る。
「お父様、私はシェリラお姉様を周りに自慢したいですわ?折角新しいお姉様ができたいのに…お邸に引きこもっていて」
「アニシア…それは」
シェリラも困った表情をする。
極力外に出ないのは社交界で噂が流されているからもあるが、良くしてくれているクランベル公爵家にこれ以上迷惑をかけられないからだった。
「パパ、どうしてシャェリラ姉様を自慢しちゃダメなの?ヴィオレット姉様よりもずっと優しくて美人で理想のお姫様なのに」
「ティナ、嫌味?」
「だってヴィオレット姉様はお姫様の仮面を被った魔女ですもの。正真正銘のお姫様はシェリラ姉様よ」
6歳のティナは幼いながらにクランベル一の天才で毒舌だった。
姉二人に全くの遠慮がないのだ。
「後で覚えてなさい」
外どらだけはかなり良いのはヴィオレットの上を行く。
「話は脱線したが、シェリラは健康状態があまり良くないからな。お披露目前に貴族達が邪推するだろう」
「そうね、社交界では好き放題噂を流しているわ。これ以上シェリラが傷つくのは…」
「いいえ、私は大丈夫ですわ」
二人の気遣いは嬉しいが、その為にクランベル公爵家に迷惑はかけたくなかった。
「私達は別に問題ないのよ?噂を流しても黙らせて握りつぶしてしまえるだけの権力はあるのだから」
「そうだな。甘い顔をすれば増長する輩等」
(二人の顔が鬼に…)
普段大人しい人間ほど怒らせると怖い事を思い知る。
特にシーリカの笑顔は王妃と重なる物があったのだった。
「今度のお披露目まで待つんだ。いいね」
「はい」
「いい子だ。決して悪いようにはしない」
こうして話し合いは終わったが。
真夜中寝付けなかったシェリラはお披露目の日を思うと心配で仕方なかった。
「お披露目の日にはシロカも一緒に来てくれると言ったけど…大丈夫かしら」
現在シロカは研修を受けているために王宮にいた。
お披露目までには戻る予定だったのだが、何か置きそうで不安を感じていた。
「お兄様、お祖父様…」
養女になってから穏やかで幸福な日々を送っている。
クランベル公爵家は資産家でもありながら生活ぶりは派手ではなくとても質素であるがとても温かくシェリラが望んだ暮らしだった。
広間は広さはあれど、家族が会話できる距離で食事を取る。
休みの日はゆっくり過ごし温かった。
その一方でラインハルトが心配でならなかったのだった。
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