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しおりを挟むクランベル公爵家はシーリカを中心と言っても過言ではない。
シーリカの夫、フェルマンは愛妻家で有名で結婚の条件に婿入りしろと告げられても二つ返事する程にシーリカを深く愛していた。
とは言え、盲目に愛しているわけではないのだ。
「楽しそうだねシーリカ」
「ええ、あの子達が楽しそうだわ」
バルコニーで本を読みながら椅子に座りゆっくり過ごすシーリカにお茶を淹れるフェルマン。
「ありがとう」
「彼女を養女に迎えるのは少々大変だったが、良かったかもしれない」
「ええ、ノースライナ―侯爵様の努力もありましたし…何より普段我儘を言わないヴィオレットの願いもあったが」
「事情を聞かされて驚きましたわ」
以前からノースライナ侯爵家ではごたついている事は知っていた。
次女を溺愛するまあまり長女は蔑ろにしているのではないかという噂はデマではない。
10歳にしては大人び過ぎていて、物わかりが良すぎるシェリラを危うく感じた。
「以前、顔合わせで高熱を出されてからでしょうか…シェリーが変わり出したと感じたのは」
「それ程交流があるわけではないないが、公の場にもでなくなった。それに大人顔明けの社交辞令を身に着けていていたな…不気味さも覚えた」
以前から我儘を言わなくとも感情を読みやすさはあった。
王族ならば10歳でも大人顔負けの演技を身に着けている王子や王女はいる。
生まれた時から大人の腹黒さを見て、身を守る術を得るのだから。
シリアンやヴィオレットは大人にならざる得なかった環境だからこそ解る。
だがシェリラは王族ではない。
侯爵令嬢であってもあそこまで大人になれるものではない。
「熱を出してからシェリーが変わったと妹から聞いています。以前よりも口数も少なく王宮の侍女も我儘も好き嫌いも一切言わず…勉学だけに励み、余計な事は口にしない」
「それが問題だ…まるで感情を無くした人形のようではないか」
「すから妹は恐れたのです。このままではシェリーの心は壊れる。いいえ、手遅れになる手前でしたわ」
直接声をかけた事はない。
ただ、シーリカは知っていたのだ。
妹が可愛がっている未来の義娘だと。
だけど家庭環境は決して良い物とは言えなかった。
姉弟で差別するのは貴族に限らず上流階級は少なく無かったが、差があまりにも酷かった。
「その頃でしょうか、ラインハルト様のご様子も変わられたのは」
「そうだな。すべてはシェリラの変化の後だ。それ以降ヴィオレットは邸を出ることが多く」
不信な点が多いと二人で考えるも答えはでなかった。
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