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しおりを挟むシェリラが正式にクランベル公爵家に養子に迎えられた後にラインハルトに手紙が届いた。
「流石というか」
手紙にはヴィオレットから報告と、公爵家でシェリラは受け入れられている事を写真と一緒に書かれていた。
聞けば公爵夫人は体が弱く、話し相手にシェリラは最敵だった。
華やかな舞踏会にお茶会に出るよりも静かなサロンで音楽を聴いて哲学を専門家と語り合う事を好ましく思っているそうだ。
慈善活動にも活発に行っており、シェリラと話も合うそうだ。
「良かった。公爵家では上手くやれそうか」
まだ遠慮はあれど、時間が解決してくれるかもしれない。
クランベル公爵夫人家は王妃の姉に当たり穏やかな性格だった。
幼少期から体が弱い事で妹のシリアンが庇っていたとも言われているが公爵家を盛り立てて商売の才能もあり聖女と謡われていた。
「公爵夫人は優れた指導者とも聞くから安心だ」
手紙を抱きしめようやくシェリラが幸福になれると思い笑みを浮かべる。
「お兄様!」
「何だ、騒々しいぞ。今はマナーレッスンの時間だ」
「助けてください!朝からマナーレッスンばかりです」
「まだ二時間だ。僕は朝の六時に起きて、その後勉強は済ませた。その合間に領地経営の勉強だ。これまでサボったツケが回って来たんだ」
「酷いですわ…そんな言い方」
泣こうが興味なく手紙を箱に入れようとする。
「その手紙はお姉様から?」
「ヴィオレット様からシェリラの事だ」
「お姉様…」
シェリラの名前を出すと同時に表情が険しくなる。
「鬼のような顔をするな。今後はお姉様と呼ばすシェリラ様と呼ぶんだ」
「なっ…何故ですの」
「僕も公の場ではシェリラ様と呼ばなくてはならない。王妃陛下の姉君の娘となった…僕達は家臣なんだからな」
公爵令嬢となったシェリラを今まで通り気やすく接する事は許されない。
「王家の仲間入りを果たしたんだ。当然だ…無礼をすれば確実にお前は打ち首だ。母上と父上も裁きが下る。お前ひとりの我儘で僕達は未来を断たれ…」
「嘘よ!こんなの…なによこんなもの!」
手紙を奪い握りつぶす。
「はぁー、何しに来たんだ。誰か…これをつまみ出してくれ。公務の邪魔だ」
「はい」
「お兄様!待って…」
使用人を呼んでミレーヌをつまみ出す。
「これ以上酷いならお前は領地に送る。この家の当主は僕だ」
「離してぇ…お兄様!」
部屋を出ても暴れているが、時間の問題だろうと思いながら手紙を手に取る。
「カモフラージュをしておいてよかった」
ミレーヌが破ったのは中身のない封筒だった。
万一の為にダミーを用意していおいたので手紙は無事だった。
手紙は鍵付きの箱に入れ、引き出しにも鍵をつけている。
その引き出しには懐中時計が入っていた。
「もう繰り返させない」
懐中時計を握りながら祈りを捧げていた。
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