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しおりを挟む「どうして勝手な事を!」
話しは数時間前に遡る。
シェリラが邸を出た後にミレアルを連れ出し、執務室で話をする事にした。
話し合いにはならず、一方的にミレアルが怒鳴り散らしていたが。
「これは王命だ。だが、公爵家に養女に出す事はシェリラの身を守る事に繋がる」
「だからって…養子に出せば!」
「君も我が子が王家に嫁ぐことを望んでいたじゃないか。王太子妃ではないが、ある意味では影響力はある」
「でも…」
王家に娘を嫁がせることが悲願だった。
王太子妃でなうとも王族の仲間入りを果たせば、同じような事だ。
「公爵家に娘を奪われたのですよ」
「言い方が悪い。私達の娘が公爵家でも大切にされ、後に王太子妃殿下の補佐ができるんだ。これ程名誉な事はない」
「本気で言っていますの?」
「君こそ何故そんなに嘆く?シェリラは王太子妃になるのを反対していただろう」
「なっ!」
「あの子に無理な教育をして不向きだと言っていただろう?君も無理をし過ぎた。だからもういんだ」
穏やかな表情で気遣いの言葉を放つも、ミレアルはゾッとする。
(旦那様は…本気だわ)
優し気な笑顔の中で、何を言っても覆らない。
今までとは違う何かを感じたミレアルは恐ろしく感じる。
「ミレーヌも、これ以上我儘が過ぎれば社交界で生きていくのは難しい。再教育に私も関わろうと思う…君に丸投げして本当に申し訳なかった」
「旦那様…」
「ミレーヌはもっと人を思いやれるようにこれからは舞踏会よりも教会や孤児院の視察に同行させようと思う。思いやりの心をもっと知って欲しい」
(そんな場所にあの子を!)
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「私は…そんなもの!」
「今日は一度に色々あって疲れただろう。しばらくミレーヌは私が見ているから休みなさい」
(ミレーヌまで私から取り上げると言うの…どうしてしまったの!)
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ミレアルの言葉を聞きもしない。
「君も疲れているんだ。長年のプレッシャーに…少し休むべきだ」
「待ってください」
「王妃陛下は今回の事も不問にするとおおせだ」
(ふざけないで…私を!)
ミレアルの憎しみが強くなるもライオネルは背を向けて部屋を去って行った。
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