愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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閑話7過去編父の愛情②

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見せられた写真は幼少期に家族で過ごした別荘に良く似ていた。


「この別荘の設計を一年前にしていたそうですわ」

「一年前…」

社交界では妹を虐げている噂と並行して、偽りの婚約者として噂を流されていた。
シェリラを形だけの妃として寵妃はミレーヌだと噂を流されていた現状では、婚約解消ができても縁談は望まれず、王都では生きられない。


何らかの形でミレアルに追い出されるだけで済まない。
一年前に既に決めていた事になる。


「辺境地の修道院の院長先生にも話は通していたようですわね」

「馬鹿だろ…今さら!」

「遅すぎましたわ。こんな事をするぐらいなら」


王都から追放になった後は何も縛られることなく静かに生きて穏やかな時間を過ごして欲しいと思ったとしても、遅かった。



「父君は馬鹿で愚かでしたわ。妻に愛されなくとも妻を一途に愛した…だけど」

「父上は馬鹿だ。母上の愛し方を間違えた…シェリラと同じだったなんて」


泣く事も出来なかったラインハルトはこの時涙を流した。



何もかも遅かった。
だが、ライオネル自身も苦しんでいた事だけは確かだった。


「ラインハルト様、私は…」

「はい」


「いいえ、何でもありませんわ。次に会える時までしっかりなさってください」


ヴィオレットは何かを言いかけながら言うのを止た。


「シェリー、お前はちゃんと愛されていたようだ。だが、何もかも遅い…遅すぎるんだ」


憎しみはあれど、ライオネル自身もどうにかしようと思った。
けれどできなかったのだ。


障害となったのはあの二人でも、敵は身内だけではない。


「思えばあの人も可哀想だったかもしれない」

今すぐあの人に会う事は出来ない。
心の整理ができないし、今はライオネルを見ることが気でない。


「僕は…」

「本当にダメ男ですわね。貴方も父君も…別に今すぐ解り合うなんて無理だし。誰も望んでませんわ。なのに何時までもグチグチと」


「ヴィオレット様、貴女はデリカシーと気遣いをもう少し考えてください」


「男にそんなの必要りませんわ。特にダメな男には」


傷ついている相手に塩を擦り込むような言葉だったが、今は優しい言葉をかけられるよりも救われた。


「今は傷ついている暇はありませんわよ。私も貴方も」

「はい」

「それから猊下の遺言があります。その遺言を果す為に力をお貸しくださる?」

「え?」


「すべてを取り戻すために」


この日から二人が同士として動き始めたのだった。




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