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今の若い世代の貴族達はフィディオの発言力は王弟殿下という立場無くなれば意味がないと思う者が多い。


実はその逆と知る者は少ない。
そう見えるようにしているのがフィディオと陰で暗躍している王妃によるものだった。


「貴族派は自分の息の掛かった隣国の姫君を王太子妃に向かえたいと考えているようですが…本当に馬鹿が多いですわ」

「仕方ありませんわ、身の程を弁えないのですから」


「お二人共…」


ある意味一番的に回してはいけない人物を敵にしたミレアルとミレーヌは今後どうなるか解らない。

元より王妃とミレアルはあくまで友人の奥方としてしかみていない。
しかも身分から言っても格差がありすぎて親し気にすること自体ありえなかった。


「失礼いたします」

「どうぞ」

そんな中、傍付きの侍女が部屋に入って来た。

「王妃陛下、フィディオ様がいらっしゃいました」

「あら、早かったわね」

「え?王妃陛下…どういうことでしょう」

「決まってますわよ。何故貴女をここ呼んだと思っていて?後は若い人同士に…ねぇ?」

「ええ」



いきなりな事でどうして良いか解らなかったが。


「失礼します」

「私はこの後公務がありますの?後は良くて?」

「公務…」

「ええ、陛下と一緒にね?フフッ…」


王妃の微笑みは恐ろしい程の冷たかった。
シェリラを覗くこの場にいる全員がこの後何がなされるか安易に想像ができていた。


「私も邸に帰らなくてはなりませんので失礼します」

「また後程…」

シェリラはそのまま取り残されてしまった。


(どうしよう…何を言えばいいの?)

緊張して何を話せばいいか解らない。
リシャールとの時は当たり障りのない事務的な事を話していたので困る事はなかった。

シェリラはある程度合わせるぐらいで済んだのだが、相手がフィディオならば変わって来る。


「シェリラ、今回の事はさぞ驚かれているでしょう」

「はい」

「貴女は申し訳ない事をいたしました。私が強引に婚約を進めてしまって…」

「えっ…」


申し訳なさそうな表情のフィディオにシェリラはやはりと思った。


(やっぱり私を救う為だけに?」


嬉しい反面、愛情は一切ない事に悲しくなる。


(いいえ、何を考えているの。なんて身の程知らずな)


全てを望むのは強欲だと思ったのだが…


「私は聖職者でありながら強欲な男です。甥の婚約者に懸想し、せめて師としてでも貴女に好かれたいと邪な感情を抱いておりました」

「は?」

「下心をずっと隠しておりました」

(猊下が…下心)


奈落の底に突き落としたと思えば持ち上げる。
しかも本人に自覚はないのが質が悪かったのだった。


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