愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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王宮内にある離宮には王妃が待っていた。


「シェリラ、待っていましたよ」

「王妃陛下…」

「ヴィオレット、ご苦労様でした」


傍にいるヴィオレットに労いの言葉をかけ、既に用意されている席に座るように促した。


「突然の事で驚いているでしょう。ごめんなさいね」

「そんな…」

王妃が頭を下げる事は公では許されないからこそ、この場で謝ったのだ。


「息子の配慮の無さは母親として申し訳なく思ってます。言い訳になりますが…父親に似て優柔不断で、私も婚約当時から結婚して直ぐは頭を抱えまして」

「知りませんでした」

「ええ…身内の恥ですので私が隠しましたわ。息子にまで遺伝しているなんて嘆かわしいですが…あれは勉学に真面目だけど、少しばかり周りが見えないというか」


深いため息をつく王妃に冷めた表情でヴィオレットが告げる。

「無理もありませんわ。妻が優秀だと夫はダメ男になるのです、その癖勘違いする生き物です」

「ヴィオレット様…」

「リシャール様も勘違いが酷かったのですわ」

相手は国王なのにいいのかと思いたくなるが、王妃も賛同するように頷ている。


「もっと早く婚約解消をさせたかったのですがそれなりの理由が必要でしたの」

「ですが、私が猊下の伴侶とは…」

「貴女は慈善事業にも精を出し、優秀ですし。王家として貴女を欲しています。ですが、身の安全を守るにはそれ相応の地位の者でなくては危険です」

「はい、お妃教育の中で知り過ぎてしまっています」


「だからこそ王族の親族ではダメですが、フィディオは王の弟。教皇猊下でもある彼ならば王太子殿下の婚約者候補を婚約者に迎える事は可能です」

(王の次に地位を持つけれど…)


現在王位継承権を手放しているが、影響力は強い。
聖職者のトップでもあるし、王太子よりも政治に口出すできる権利がある。

教皇猊下の妻となれば簡単に手が出せないのだから。


「貴族派の者がどう出るか」

「その手の事は大丈夫ですわ。文句は言うでしょうが、リシャールの婚約者の座を狙う方が多いですもの」

確かに王太子殿下の婚約者の座を狙う者は多い。
現在は王弟殿下という立場のフィディオであるが、リシャールが王となれば状況が変わって来るのだから。


王妃は政治に直接口出しができるが、教皇猊下の妃は表立って政治の場に出る事はないのだから。


ある意味、高位令嬢であるシェリラが王太子妃候補から外れて喜ぶ貴族は多かった。
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