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しおりを挟む強引に馬車に乗せられ、王宮までの道中。
「あっ…あの」
「本当にどうしてこうも間抜けですの?本当に見ていてイラっとしましたわ」
「はい?」
馬車の中で呆れたように言う。
「あの…ヴィオレット様?」
「貴女、前世の記憶を持っていますでしょう?」
「えっ…」
「その表情は当たりですわね…もし違ったらどうしようかと思いましたけど。苦労した甲斐がありますわ」
(どういう事!)
いきなりの事に驚くシェリラを無視して話を進める。
「心配いりませんわ、従者には聞こえないようにしています。とれから補足しますが、兄君と侍女も同じですの」
「は?」
「もう少し違う反応をなさいな。本当にこれで良く魔の巣窟を生きてこられたわ…ある意味ずるがしこい妹君の方がこの世の終わりが来ても他人を犠牲にして生きて行きますわね…それだけ底意地の悪さがないとは」
「あの…」
言いたい放題でいるがヴィオレットに困惑するばかりだ。
「二度目なのだからもう少しうまく渡ればいいものを…ですが、貴女のおかげで馬鹿を片付けられますわ。貴女は不敬罪をした妹、そして母の非礼を詫びたと使用人は思っていますわ。今の侯爵家にあの二人を味方する馬鹿はいません。真面な神経を持っていればですが」
「ヴィオレット様、何かご存じのなのですか…私!」
「戸惑うのも当然ですわ。時期が来たら説明しますわ。その前に確認させてくださる?」
「はっ…はい」
鋭い視線で睨まれドキッとする。
公爵令嬢としての威厳なのだろうか、それとも…。
「貴女、猊下を好いていますわよね」
「へ…」
「まぁ、確認するまでもないですけど。一応ですわ…万一貴女にその気が無かったら猊下が余りにも不憫ですわ?前世の頃から貴女の幸せを願い、独身の誓いをしたのに貴女が死んだ後に後を追う様に逝ってしまいましたのよ」
「なっ!」
(猊下が亡くなられた?)
前世の事は自分が死んだ後の事は知らない。
フィディオがその後どうなったかなんて知る術などなかった。
「猊下が…」
「元より三年前に病が見つかりましたの。そこで王都から離れた神殿にて療養させるつもりでしたの。引退も考えていました。修道院の傍にある神殿で」
「それって…」
「なのに貴女は事故で亡くなり、猊下は精神的な負担が酷く病が悪化…皮肉な事に貴女を追う様に」
(そんな!)
あまりにも悲しい事実にシェリラは泣きたくなった。
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