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閑話6過去編ライオネル
しおりを挟むせめて残りの人生だけは静かに過ごして欲しい。
その為に私ができる事は少なかった。
なのに――。
「貴方、あれを修道院に行かせるとはどういうことです」
「ミレアル、自分の娘の事を…」
「あんな恥さらし、娘でも何でもありません!ミレーヌを殺そうとしたんですよ…我が家から犯罪者が出ただけでも!」
「そんなのは噂だ。貴族派の策略によるものだ…」
いいかけた言葉を飲み込んだ。
これまで私は何度も言うことができたのに言わなかった。
王太子妃となるシェリラには厳し過ぎる教育だと遠回しに言っても、ミレアルは聞かなかった。
ラインハルトは跡継ぎ故に早々に領地で英才教育を受け、侍女が身の回りの世話をしていた事で子を奪われたと思っていたのだろう。
だが、母親として関わる場はあった。
なのに母を憎み、侍女を憎むようになった。
伯爵令嬢であるミレアルと私の婚姻は社交界でもバッシングを受けた。
身分差が違うだろうと。
当初は母が社交界の噂を払拭しようとしたのだが、ミレアルも意地になっていた。
だからこそ完璧を求めた。
「ミレーヌに嫉妬してこんな…」
「確かに可哀想な事をした」
「そうですわ…」
「シェリラがあまりにも不憫だ」
「貴方?」
ずっと頑張っていたのに。
シェリラはずっとミレアルに認めて欲しかったと言うのに。
「母に認めてもらいたいと血の滲むような努力をし続けていたあの子は最後に手にしたのは…」
「何を言ってますの?」
「ミレアル、シェリラはリシャール殿下とミレーヌの仲を邪魔する気はなかった…少し前に手紙で婚約解消をした後にミレーヌを妃にして欲しいと書かれていた」
「でたらめを言わないでください!」
「君が握りつぶした手紙だ。捨てられているのを侍女が見つけたそうだ…あの子は殿下を愛していたわけじゃない。他の思う人がいた」
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「これは夫としての命令だ。シェリラは修道院に送る。覆す事は許さない」
せめてこれから自由に生きて欲しい。
そう思ったが、修道院を出発した日にシェリラは事故で亡くなった事を知らされ償いすらも叶わなかった。
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