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しおりを挟む今さらだと解っている。
それでも最後に伝えたかった言葉がある。
もう遅いかもしれないが。
「何故です」
「ラインハルト?」
「どうして今さらシェリーに…そんなの今さらです。愛していたとでも言うんですか?今まで見て見ぬふりをしていて」
「そうだね。私はそう思われても仕方ない」
(何時も遅すぎるんだ!)
ラインハルトは唇を噛みしめる。
何時も行動が遅い父が憎らしくなる一方で、本当は家族を愛している事も知っていた。
(あの時だってシェリーを守る為にしたことだったと知っているけど!)
過去の事を簡単に許せなかった。
そして今、本当の意味でシェリラを守る為にライオネルは罰を受けるつもりだった。
(こんな事になるなら…別の方法があったのに)
ライオネルは決して冷たい人間ではない。
妻を愛し、娘を愛していたが、優先順位を間違えてしまったのだ。
「お兄様…もうお止めください」
「シェリー…」
「お父様、私はお父様にちゃんと愛されていましたか」
「ああ…私の愛し方が間違っていた。もっと君にぶつかれば良かったんだ。そして妻とも…だからせめてこの言葉だけは忘れないで欲しい。幸せになりなさい」
「はい…」
父に愛されていた事をようやく知り、シェリラは笑顔を見せた。
まだまだ距離はあるが、いつかちゃんと分かり合える日は来るかもしれないと思ったのだ。
「貴方、正気ですの?」
「ああ、シェリラは公爵家に養女に出す。王宮に出向き、これから今後の事を…」
「私も王宮に向かいますので大丈夫ですわ」
「待ってくださ…」
ミレアルは完全において行かれる状態だったが周りは話しを進めていた。
「私が本日来た理由は手紙だけではなく、シェリラ様のドレスを新調する為ですの。後で使用人を呼びますので貴女は身一つで我が家に来てくだされば結構です」
「ありがとうございます」
「お礼は不要ですわ」
既にこの邸から出る準備も整っている。
「リシャール殿下も王妃陛下がお呼びですわ」
「母上が?」
「ええ、此度の事でお話があると」
不敵に微笑む表情は怒った時の王妃陛下と同じだった。
「あっ…ああ」
「ではごきげんよう」
「誠に申し訳ありません、公女様」
「いいえ、オズワルド様、侯爵様…夜会でまたお会いできるのを楽しみにしております」
そのままシェリラの手を引きながらヴィオレットは去りぎわに。
「御機嫌よう侯爵夫人」
勝ち誇った表情で笑みを浮かべ去って行くのだった。
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