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しおりを挟む全て思惑通りとは言わなかったが、ある程度は予測できていた。
(だけど、嬉しい誤算です事)
ミレーヌの愚かな行動はある程度予測できたが、ここまで馬鹿とは思わず、内心では笑っていた。
邸内で事を起こしたのは、ささやかな復讐と、リシャールの目を覚まさせる為だった。
幼い頃から勉学に熱心で同年代の貴族に比べれば優秀であるが、抜けている者が多すぎるのだ。
まだ成人もしておらず幼い故に仕方ないかもしれないが、王太子殿下の発言により多くの人間が不幸にもなる。
基本優しい性格であるが、優柔不断な一面は国王に似ているのだ。
対するヴィオレットは最初から白黒はっきりさせたい性格で警戒心は強いが、味方と思った人間には優しい。
逆に敵と判断すれば情けなど一切かけなかった。
むしろ慈悲の欠片等ないのだ。
「…まだですわ。もっと踊って貰いますわ」
ここが社交場ならば自分の評価を下げずに自滅する方法を選ぶが、ここがノースライナ―侯爵家の邸でいるのは身内と使用人。
しかも先代から仕えている使用人が揃っているのを狙ったのはあの二人を孤立させ、現ノースライナ―侯爵に仕える執事にも思い知らせるためだった。
リューイ・バイデン。
ヴィオレットは前世でもあの男が大嫌いだった。
真実を受け入れず、ミレーヌに同情的だった。
本来の被害者に懺悔もなく、自分の考えを正当化したあの男が不愉快だった。
(けれど、改めて突く必要はないですわね)
既にミレアルの醜態を見て現実を受け入れただろう。
ヴィオレッタの予測以上の結果になり不敵に微笑んでいた。
あの時点でシロカがヴィオレッタに質問した事も、事前に連絡を取っていたのだ。
ただ誤算というのはシェリラがミレーヌを引っぱたいた事だ。
(もしかして彼女は…)
同じように前世の記憶を持っているのだろうか?
そう思わずに入れなかったが、今はこの先の事を考えるべく行動を移さなくてはならない。
既に邪魔者一人は部屋から追い出したが、未だにこの場にいる邪魔者がいる。
ラインハルトに責められ傷つき、悲劇のヒロインぶる姿は滑稽だった。
これまで息子に嫌われている以前に一切の関心がないなんて気づかなかっただろうに。
――でもまだ甘いわ。
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「ラインハルト!」
「貴女は一度だって僕をちゃんと見てくれなかった。僕を愛してくれたのは祖父母とシェリーだけだった」
「なんて事を…」
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ある人物がラインハルトを庇ったのだった。
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