愛されない私は本当に愛してくれた人達の為に生きる事を決めましたので、もう遅いです!

ユウ

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閑話5過去編スーザン

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一日中降り注ぐ雨の中スーザンは部屋に引きこもっていた。


「シェリー様」

「スー」

「貴方!」


どんなに泣いても枯れることがなかった。


「私は王室家庭教師でありながら何もできませんでした」

「君一人が悪いんじゃない」

「あんなに…あんなに頑張っておられましたのに!あんまりです!」


夫の胸で泣き叫ぶスーザンは自分の無力とこの世の無情さに絶望していた。


「どうして…母親が娘の死を喜ぶのです。あのような冷酷な…恐ろしい事を」

「侯爵夫人は病んでいるとしか思えない…いや、劣等感故か」

「お可哀想なシェリー様。私はあの方が気の毒でなりません」

王室家庭教師として、シェリラの傍にいながら何もできなかったスーザンは自分を責め続けた。


「私は教え子であるお嬢様に淑女としての振る舞いをとお教えしました。常に気高くと…その結果がこのような事になるとは。私はシェリー様に一人の女性として強く美しく…そして自信を持っていただきたかったのです」

「解っている。彼女も理解されているはずだ。君を慕っていただろう?」

「ですが、私が厳しくし過ぎた所為で!」

もっと周りに甘えることができる環境を作れば?
他者に甘えることができないシェリラの性格を熟知していたのに。


「王妃陛下との関係も良好で、王妃陛下はシェリラ様を我が子のように思っていらぅしゃいました」

「ああ…」

「ですが、母からの愛情を得られない事はどれだけ辛いか…」

ずっと寂しそうにしていたシェリラの横顔を思い出す。
スーザンはシェリラの寂しさを理解しながらもどうする事もできなかった。

元平民で伯爵夫人であるスーザンでは侯爵家に意見する事はできるはずもないのだから。


「貴方…私はこの度の責任を取りますわ」

「どうするんだい」

「せめて喪が明けるまでお暇を頂きたく思います。そしてあの方の家庭教師は辞めさせていただきます」


シェリラの代わりに王室に入ることが決まったミレーヌの専属家庭教師を任されたスーザンだったが既に役目は全うできなかった。


やる気もなく、学ぶ姿勢も感じられず。
しかもシェリラの元家庭教師だった事であることない事を言われて、少し厳しくすれば苛めだと言われる始末。

その所為でリシャールに何度咎められたか。


「シェリラ様と懇意な学者、教師等は遠ざけられています。誠心誠意お仕えしても意味がないのです」

「解った。私から伝えよう…シェリラ様の教師達もなんとかしよう」

「ありがとうございます」


涙をハンカチで拭いながらスーザンは空を見上げる。


ようやく雨が上がり始めた頃だ。


「どうか、天国では安らかに」


スーザンは雨上がりの空を見上げシェリラが今度こそ幸福になれる事を祈った。


そして喪が明けた後にスーザンは王妃の傍付きとして召し抱えられた後に次期王太子妃として選ばれたヴィオレットの教育係を任されることになるのだった。


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