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しおりを挟む「本当に良いのか」
「はい、申し訳ございません」
重い空気の中、王宮の一室にてライオネルは頭を下げていた。
「どうか…」
「しかしだな」
煮え切らない態度の王は簡単に首を縦に振る事はできなかった。
それ程に難しい問題だった。
「シェリラとリシャール殿下の婚約の続行は既に無理かと」
「だが…」
「陛下もお心遣いは嬉しく思います。ですが私は娘に無理をさせ過ぎ、医師にもこれ以上は危険だと告げられました。私が仕事にかまけていた所為です」
ライオネルはこれまでの自分の愚かさと向き合うべく覚悟を決めた。
「貴方、これ以上は致し方ありません。何より私は最初から反対してましたのよ」
「何を言っている!お前だって王家に嫁がせたがって…」
「ええ、シェリラ嬢を王家に嫁いで欲しい気持ちは変わりません。ですからリシャールの嫁ではなくても問題ないのではなくて?」
「は?」
王妃は変わらない笑みを浮かべながら続ける。
「私は最初から彼女を迎えたいと思っていたのは王妃ではなくてよ」
「ではどうする気だ」
「何を言ってますの?フィディオがいるではありませんか」
「なっ!」
乙女のような表情をしながら嬉しそうに話す王妃は子持ちには思えない程若々しい。
「最初から私は決めてましたのよ?シェリラ嬢のように向学心旺盛で聡明でしっかりした令嬢をフィディオの伴侶に!」
「いや…しかしだな」
「幸いにも婚約式はまだですわ。後は私が握りつぶせばどうにでもなりますの」
「強引だろうが!」
「あら?勝手に私の意見を聞かなかったのは誰です?若くして教皇にされ自由もなく不自由な思いをされている弟君の初恋すら握りつぶす気ですの?」
「初恋?」
王は固まった。
王妃の言葉は初耳だったのだ。
「私とて可愛い弟を不憫に思わないわけではないが…」
「王妃陛下…」
「まぁ、殿方はどうしてこう自分の都合と業を押し付けたがるのかしら?」
深いため息を付きながら王妃は悔やむ。
義弟が淡い恋心を封じて苦しんでいる事は薄々感じ取っていたが、シェリラがリシャールを好いているならばお節介をすべきではないと思ったが。
「私の姪から言われましてね。二人は互いに思い合っているそうですわ…ですが家の為に心を殺していると。泣かせる話ではありませんか…母君の為に心を殺していたとうで…にも拘らず」
「おい、扇が割れているぞ」
「私はシェリラ嬢が気の毒でなりませんわ。ですから、フィディオの婚約者に迎えたいと思います。王家に嫁いだ後は勿論私が姑になりますが…よろしくて?」
男二人は蛇に睨まれた蛙状態だった。
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