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しおりを挟む会話に割り込んで入って来たミレーヌとその後ろに疲れた表情をする傍付きの侍女二コラ。
「お姉様、ズルいですわ。勉強をずる休みして遊びに行くなんて」
「ミレーヌ」
「それに新しいお洋服に帽子まで…あら、そのコサージュ素敵!」
胸元のコサージュに目が留まり、ミレーヌは手を伸ばす。
「私にください」
「これはダメよ」
「どうしてそんな意地悪をおっしゃるの。お姉様よりも私の方が似合いますわ」
ミレーヌの勝手すぎる言い分にげんなりする。
シェリラの胸元につけているコサージュは特別な物だった。
銀花と呼ばれている物だ。
別に高価な代物ではないが、スーザンのサロンに通う令嬢の中でも特別に優秀な生徒にだけ与えられるものだった。
しかもこのコサージュには意味がある。
「これは…」
「いいでしょ!」
ミレーヌはシェリラの返答など気にせずに手を伸ばそうとするも。
バシッ!
「きゃあ!」
「やめんか!」
オズワルドが杖でミレーヌの手を叩き落す。
「痛い…ひっく…うわぁぁぁぁん!」
「泣くでない。なんとみっともない事だ…これが私の孫か」
泣き叫ぶミレーヌを見て目も当てられなかったオズワルドは噂通りなのかと思う。
「ミレーヌ!」
「お母様ぁぁぁ!」
ミレーヌの泣き声で急いでかけこんできたミレアル。
「お母様!お祖父様が酷いの…」
「どうしたの?」
「どうしたもこうもない。ミレーヌはメーヤ夫人から送られた銀花を無理矢理奪おうとしたのだ」
「えっ…」
「だって欲しかったんだもん。私の方が似合っているわ…お姉様には似合わないから」
泣きながら自分の行動を正当化するミレーヌ。
普段ならミレアルも仕方ないと言うのだが、強請った物が悪かった。
「ミレーヌ、あれはメーヤ夫人の生徒の中でも許された人間しか持てないのよ」
「でも私が欲しいの。今までだって!」
「今まで?」
ミレーヌの言葉にオズワルドは眉を動かす。
「ミレアル、今までミレーヌはシェリラの物をミレーヌに!」
「はい…いくつかは」
「馬鹿者!何という事を」
オズワルドはミレアルを怒鳴りつけた。
「ですが、シェリラの贈り物の一部ですし…」
「私の友人がシェリラに送ったリボンをミレーヌがつけていたと聞かされた。まさかと思ったが…白いレースのリボンではあるまいな?」
「白いリボン?破れたから捨てさせたわ」
「捨てただと!あのリボンは私の妻の親友が作った物だ!」
シェリラに送ったプレゼントをミレーヌの手元に来て、しかも捨ててたとあっさり言う事が信じられなかった。
「ミレアル、これがお前の教育か?挨拶一つ真面にできず。姉の大事な物を盗もうとするような娘に…」
「盗んだなんてひどいわ!」
「シェリラが嫌がるのも聞かずに奪おうとしただろう…お前のしようとしたことは盗人同然だ!」
理性的なオズワルドはまるで盗人を見る様な目でミレーヌを見下したのだった。
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